
滞納1,500万円超、修繕積立金不足、管理会社撤退を乗り越えて
小規模マンションでは、戸数が少ない分、一人ひとりの役員にかかる負担が大きくなりがちです。
「仕事や子育てが忙しく、理事になる時間がない」
「高齢になり、役員を引き受けるのが難しい」
「輪番制で理事になったものの、専門的な問題までは判断できない」
このような状況で、従来どおりの理事会運営を無理に続けようとすると、重要な課題が先送りされてしまうことがあります。
例えば、
といった問題です。
課題が一つであれば、スポットで専門家に相談する方法もあります。
しかし、複数の問題が重なり、管理組合だけでは運営そのものが難しくなっている場合には、マンション管理士などの外部専門家が管理者に就任する「第三者管理方式」も選択肢になります。
今回は、埼玉県草加市にある27戸の小規模マンションで、当社が「プロ理事長」として管理組合運営を担っている事例をご紹介します。
このマンションでは、現役世代の区分所有者が多く、仕事などを理由に役員を辞退する方が増えていました。
役員のなり手不足が進むなか、
「理事長を専門家に任せることはできないか」
というご相談をいただいたのが始まりです。
その後、メルすみごこち事務所が管理者、いわゆる「プロ理事長」に就任しました。
現在、契約は8年目になります。
このマンションでは理事会を設置せず、当社が管理者として、
など、従来であれば理事長や理事会が担っていた業務を継続的に行っています。
当社が管理者に就任した当時、大きな課題の一つだったのが、約1,500万円を超える管理費等の滞納でした。
遅延損害金を含めた債権については、すでに裁判で確定していました。
しかし、裁判に勝ったからといって、自動的に滞納金が支払われるわけではありません。
債務者の状況を確認し、回収可能性を検討し、必要に応じて法的手続きを続ける必要があります。
そして、こうした業務で特に重要になるのが「継続性」です。
理事会方式の場合、役員が1年や2年で交代すると、それまでの経緯が十分に引き継がれず、滞納対応が止まってしまうケースがあります。
一方、外部専門家が管理者として継続して関与すれば、長期間にわたる対応も一貫して進めることができます。
このマンションでも複数年を要しましたが、最終的に約1,500万円の滞納金を全額回収することができました。
もう一つの大きな課題が、修繕積立金でした。
このマンションでは、竣工以来、修繕積立金が一度も改定されていませんでした。
建築費や人件費が上昇していく一方で、修繕積立金だけが新築当時の水準のままであれば、将来の大規模修繕工事や設備更新に必要な資金が不足していきます。
そこで、長期修繕計画をもとに、
を整理し、修繕積立金を適正な水準へ見直しました。
修繕積立金の値上げは、当然ながら区分所有者の負担増につながります。
そのため、
「値上げはできれば避けたい」
という声が出るのは自然なことです。
しかし、資金不足を放置してしまえば、大規模修繕工事の直前になって多額の一時金を徴収したり、借入れに頼ったり、必要な修繕そのものを先送りしたりすることになりかねません。
将来必要になる工事と金額を具体的に示しながら説明することで、区分所有者の理解を得て、財務の立て直しを進めていきました。
当初、このマンションには大規模修繕工事を一度に実施できるだけの資金がありませんでした。
そこで、最初からすべての工事を実施しようとはせず、まずは緊急性の高い外壁の一部工事を先行で実施しました。
その後、
によって管理組合の財務を改善。
残りの大規模修繕工事については、住宅金融支援機構からの借入れを活用して実施しました。
借入れにあたって必要となる検討、総会資料の作成、申込みなどについても、当社が管理者として対応しています。
修繕資金が不足しているからといって、必要な工事をすべて諦める必要はありません。
重要なのは、
「どの工事を、いつ、どの資金で実施するか」
を整理することです。
工事範囲、実施時期、修繕積立金、借入れなどを組み合わせながら、そのマンションに合った現実的な方法を組み立てていきます。
第三者管理方式を採用すれば、理事長や理事の負担は大幅に軽減できます。
しかし、外部専門家へ管理者業務を任せれば、それですべてが解決するわけではありません。
管理者の業務をチェックする仕組みも必要です。
このマンションでは、監事についてもなり手不足が課題となりました。
そこで導入したのが「役員協力金」の仕組みです。
監事に就任した区分所有者へ一定の報酬を支給できるようにすることで、役割に見合った負担軽減を図りました。
役員のなり手不足について、
「区分所有者なのだから、無償で役員をやるべきだ」
と考えるだけでは、今後ますます運営が難しくなる可能性があります。
役割、責任、拘束時間、負担、報酬。
これらのバランスを、管理組合の制度として見直すことも必要です。
管理組合運営を立て直している途中で、さらに別の問題が起こりました。
管理会社が業務を縮小することになり、この27戸のマンションから撤退することになったのです。
小規模マンションでは、管理会社を変更しようとしても、新しい管理会社が簡単に見つかるとは限りません。
管理会社によって、
など、受託基準が異なるからです。
このときも、当社が管理者として候補となる管理会社を探し、それぞれの管理内容や契約条件を比較したうえで、後継となる管理会社の選考・契約締結を進めました。
管理会社から突然、
「次回更新をもって管理委託契約を終了したい」
と言われれば、多くの管理組合は慌てます。
その状態で後継会社を探すと、
「受けてもらえるなら、多少条件が悪くても仕方がない」
となりかねません。
日常管理を担う管理会社とは別に、管理組合側の立場で条件を比較し、判断・交渉できる専門家がいることは、こうした場面で大きな意味を持ちます。
ここまで読むと、
「役員のなり手不足なら、すべて第三者管理方式にすればよいのではないか」
と思われるかもしれません。
しかし、当社はそう考えていません。
第三者管理方式には、専門家への報酬が必要です。
また、外部管理者に権限が集中しすぎないよう、
といったガバナンス体制も必要になります。
そのため、役員のなり手がいて、管理組合自身で十分に運営できるマンションにまで、一律に第三者管理方式を勧めるものではありません。
管理組合が自力で運営できるのであれば、重要な場面だけ専門家へ依頼する「スポット活用」という方法があります。
継続的な助言だけが必要なら、顧問契約でも十分です。
そして、
役員のなり手不足や課題の長期停滞によって、組合員だけで運営することが難しくなったときに、第三者管理方式を検討する。
この順番で考えることが重要です。
近年、
「40戸以下のマンションは、管理会社にとって採算が合わなくなる」
「小規模マンションは、今後管理会社に見放されるのではないか」
といった話を耳にすることが増えました。
しかし、戸数だけを見て将来を悲観する必要はありません。
確かに、小規模マンションは、
などに余裕が少ないため、一つの問題を放置したときの影響が大きくなりやすいという特徴があります。
だからこそ、従来のやり方に固執せず、そのマンションの状況に合った運営方法を選ぶことが大切です。
管理組合が自走できるなら、専門家をスポットで活用する。
継続的な助言が必要なら、顧問契約を利用する。
役員による運営そのものが難しいなら、プロ理事長による外部管理者方式を検討する。
大切なのは、
「理事会方式を続けること」そのものを目的にしないことです。
そのマンションの人材、財務、建物の状態、抱えている課題に応じて、最も無理のない管理体制を選ぶべきです。
メルすみごこち事務所では、小規模マンションに対し、スポット相談、顧問契約、プロ理事長・第三者管理方式まで、状況に応じた支援を行っています。
役員のなり手不足、滞納、修繕積立金不足、管理会社の撤退など、複数の問題が重なっている場合には、一つひとつの問題を個別に処理するだけでは十分ではありません。
管理組合運営そのものを、どう立て直すか。
その視点から考えることが、小規模マンションを長く維持していくうえで重要です。
Q. 第三者管理方式とは何ですか?
管理組合の理事長や管理者を、区分所有者ではなくマンション管理士などの外部専門家が担う方式です。特に、理事会を廃止し管理者が管理する体制を外部管理者方式といいます。役員のなり手不足への対応や、専門的な課題を継続して処理できる点が特徴です。
Q. プロ理事長を導入すると理事会はなくなるのでしょうか?
必ずしもそうではありません。理事会を残したまま外部専門家が理事長に就任する方式もあれば、理事会を設けず、外部専門家が管理者として運営する方式もあります。マンションの状況に応じて制度設計が可能です。
Q. 小規模マンションでも第三者管理方式は導入できますか?
導入できます。むしろ役員のなり手不足が深刻な小規模マンションでは、有力な選択肢になる場合があります。ただし、費用負担や監査体制、資金管理などのガバナンスを十分に整えることが重要です。当社の第三者管理方式サービス『メルのプロ理事長®』では、マンションごとに無理なく継続可能な導入方法を提案しています。
Q. 管理会社とプロ理事長は何が違うのですか?
管理会社は、会計、清掃、管理員、点検、理事会支援などの日常的な管理業務を受託します。一方、プロ理事長は管理組合の意思決定側に立ち、資金計画、修繕、契約、滞納対応などを管理組合の立場から判断・執行します。