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いまだに信じられません。
平成17年11月末、「たった1回会っただけで」尊敬の念を抱いていた寺地信義さんが急逝されてから、もう半年が経ちました。
寺地さんは52才でした。マンション管理、特に大規模修繕(改修)業界では多くのファンを持つ魅力的な方でした。
本当にかっこ良かったなぁ、、、
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寺地さんは、マンション大規模修繕工事のスペシャリストであり、また徹底して現場を地で行く、私が最も尊敬するタイプの方です。札幌でマンションに関わるコンサルティング事務所を経営しながら、国土交通省や住宅金融公庫などが主催するような大きなセミナーや学会で日本全国を飛び回り、多くの方に影響を与え続けた方です。
その一方で、懇意にしていた方々へ週1回発信し続けていたメールマガジン「元氣の素」を欠かさず発行され続けていました。
仕事のこと、ご家族のこと、自分の心のあり方のことなどを、包み隠すことなく、しかも誰が読んでも引き込まれやすい読ませ方で吐露していましたから、多くの読者が月曜日のメルマガ発行を楽しみにしていたと思います。
とっつきにくい大規模修繕をわかりやすく。この業界を変える事ができる貴重な人材だったと、生意気ながらに思っていました。
上述のメルマガ「元氣の素」で、私の心に残っている記事の中のひとつをご紹介させていただきます。
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2004年末発行、「生命力」(一部のみ掲載)
(中略)18:00から某マンションの臨時総会に、理事会の要請で出席。 覚悟はしていたのだけれど、なるほど、こういうマンションもあるのかという貴重な経験をしました。
元氣の素 179 阿修羅の正義(2004/4/18) にこんなことを書きました。
****ここから****
4月15日 北海道新聞朝刊。
文化欄のページを開くと、ひとつのコラムが飛び込んできました。
「ひろさちや の ほどほど人生論」
いつもは読まないコラムなのですが、「阿修羅の言い分~『正義』は人それぞれに」と言うタイトルに惹かれたのでしょう。要約すると、こういう内容でした。
『古代インド神話を代表する二大神は、アスラ(正義の神)とインドラ(力の神)です。
アスラには美貌の娘シャチーがあり、父は娘をインドラに嫁がせたいと願っていました。力と正義が結び合うことによって、理想の夫婦が誕生すると信じていたのです。
ところが力の神インドラは、街角でシャチーを見かけて、<いい女だ!>と思ったとたん、彼女を力ずくで自分のものにし、宮殿に拉致しました。
アスラは怒り、インドラに宣戦布告しますが、しょせん力の神であるインドラに敵うわけがありません。でも負けても負けても執拗に挑戦します。それだけ、アスラの怒りは激しいのです。
そのうち、インドラは面倒になり、ついにアスラを叩きのめし、神々の世界から追放しました。
このインド神話を前提にして仏教ではインドラを帝釈天と呼び、仏教の守護神とし、アスラを阿修羅と呼んで魔類にしました。
あれ? 悪いのはインドラであり、アスラは被害者ではないのか? なぜ、アスラが魔界に落とされ、インドラが善神なのか?
後日談を読むとその謎が解けます。インドラとシャチーは仲の良い夫婦になり、また戦闘の場面でもインドラは弱者に対して優しさを発揮しています。たしかに、シャチーを暴力で犯したのは良くないことですが、それは過去のことです。父親のアスラは、仲の良い娘夫婦を祝福してやっても良いのに、それができないアスラを仏教では魔界にしたのだと思います。
「考えてみると、阿修羅は正義の神ですが、正義というものはただ一つではないのです。帝釈天の立場に立てば、彼にだって言い分はあります。正義というものは複数形です。それぞれの正義があります。仏教はそのように考えているのです。」
正義の怒りに燃えているとき、自分が間違っているとおもっている人はひとりもいません。しかし、相手にもそれなりの言い分があります。それを無視してしまったとき、「あなたは実に阿修羅になっており、阿修羅の正義を振りかざしているのです。
仏教では、そのようになったあなたを「魔類」と見ています。」』
****ここまで****
きょうの定期総会では、まさに阿修羅ばかりが目立ちました。
意見の食い違いは誰にもあること。それを認め合うことが、まずもって社会の基本ルールだと思うのですが、総会での発言を聞いていると、感情論が飛び交って収拾がつかない。
「私の意見は、こうこう。それに対して、○さんは自分勝手だ。」
「そういうあなただって、みんなで決めたことを無視して何を言ってるの。」
「それなら、あなたが手をあげて理事長をやれば良いでしょう。口先ばっかり。」
「自分のことを棚に上げて、そんなふうに逃げるなんて無責任です。」
・・・・ひさしぶりに、「××××・・・・」という気分になりました。
オブザーバーの立場ですから、仲を割って、「まあ、まあ」と口を出すこともできず、Aさん対Bさん、Aさん対Cさん、Dさん対Eさん・・・その他大勢の阿修羅の正義を黙って見届けました。一度でも「寺地さん、どう思いますか?」と振ってくれたら、思いっきりすっとぼけた冗談を言ってから、コメントできたのですが、残念・・・。
このマンションの総会は、15年間にわたって、こういう雰囲気だそうで、だから理事のなり手も誰もいない、しかたなく抽選で理事を決めても、理事会に出たがらない・・・みんな、マンションの管理組合活動がイヤでイヤでたまらないというのです。
かつて、このマンションの去年の理事さん(今日は欠席していました)から、こんなことを言われました。
「マンションの管理組合なんて、誹謗中傷のるつぼで、自分のマンションの理事でさえ絶対にやりたくない、私だって、抽選で当たって仕方なくやってるだけ。寺地さんは、そういうマンション管理の手伝いをするために、会社を辞めたなんて、頭がどうかしているんじゃないですか? 自分のマンションの理事会や総会でさえ、そこに参加しているのが苦痛なのに、『お金のため』とは言え、よくヒ
トのマンションに首を突っ込む気になりますね。信じられないワ。何か、私たちの知らない良いことでもあるんですか?」
ぼくには返す言葉がありません。
ほんとにいろんなマンションがあるものだなあ、・・・勉強になります。
今週の火曜日に、築9年目のマンションから勉強会に呼ばれました。
住宅金融公庫北海道支店の、マンション塾という連続セミナーで講師をしているのですが、その参加者から、「ぜひ来て欲しい」という電話があったからです。
「営業活動はしないので、マンション出張セミナーという形でいいですか?」
「あまりたくさんは出せませんが、講師料も用意しますから。」
平日の夜7時に集まった理事7人は、じつに熱心に、質問を浴びせました。とりわけ、結露対策からはじまり、外断熱改修の有効性と費用、その場合の総会議決のポイントにいたる「外断熱改修」については、2時間以上も話したと思います。
先週、アニスネットのHPに「マンションの外断熱改修をする」というVisionを公開したのですが、彼らはそれを読んでいないのです。 にもかかわらず、外断熱の質問が多かったのは、どうしたことでしょう。 とにかく、質問がどんどん深くなればなるほど、笑顔での応対になりました。
「いやあ、きょうはじつにすっきりしました。かなり長期戦でいろんなことを決めていかなければならないようですから、早めにコンサルタント契約ができるように、心掛けます。」
「ありがとうございました、私もホントに楽しかったですよ。みなさんが実に熱心ですし、これまでも相当に勉強されているし、感心しました。一つだけ聞いていいですか? 修繕委員会を作っていないとのことですが、理事の皆さんは何年交代ですか? 仮に3年後の修繕だとすると、事業の継続性はどうされるおつもりですか?」
すると、理事長が即座にひとこと。
「いえ、簡単ですよ。このメンバーで大規模修繕が終わるまで、理事を続行することを約束しています。転勤とか事情で辞めた場合は、もちろん補充しますが。とてもじゃないが、きょう聞いた話だって、また来年新しいヒトにわかってもらうなんて無理でしょ。もう、乗りかかった船ってやつですよ。」
「すごいですね。だから和気藹々なんですね。それに悲壮感もないし、きょうも2時間のつもりが、もう3時間になるというのに、だれもイヤな顔をしてません。ぼくはこういうマンションのお手伝いがぜひしたいですねえ。」
「それなら、コンサルタント料をすこし負けて貰えますか?」
「そう来ると思った!(笑)覚悟してますよ。」
同じように10年前後のマンションなのに、理事のなり手がいなくて、誹謗中傷のるつぼと化している管理組合があるいっぽうで、3年も続けてみんなのために汗を流そうと決めて、楽しく理事会運営をしている管理組合もあります。
この差はいったいどこから生まれるのだろう?
そのことをぼくなりに理解して、マンションで楽しく暮らす秘訣をみんなに伝えることこそ、ぼくの社会的使命なんだろうな。
それにつけても最初(第一期理事会)が肝腎だなあ・・・
そういう思いを強くした一週間でした。
(以下略)
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上記メルマガ中の「阿修羅の正義」は、今もプリントアウトして机に貼ってあります。
『正義の怒りに燃えている時、自分が間違っていると思っている人は一人もいません。しかし、相手にもそれなりの言い分があります。それを無視してしまったとき、あなたは実に阿修羅になっており、阿修羅の正義を振りかざしているのです』
人と会うときは必ずこの一文を見て、肝に銘じて出発します。
いまでは人とのコミュニケーションがより良く取れるようになったきっかけです。
寺地さんには感謝の念を持ち続けなければなりません。
寺地さんが代表を務められていたアニスネットさんの益々の反映を願っています。
札幌へ行った際には寄らせていただこうと決めています。
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