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2024.08.10

マンション管理士に多い3つの質問に答えます!

マンション管理士の武居です。

今回は、コンサルティングの現場から、実際にお問い合わせいただいた質問について回答を作ってみました。興味のある方も多い話題だと思います。

今こそ、EV充電器を設置しよう!

Q:電気自動車の充電器について、補助金で導入費用が抑えられているので、資産価値が上がるのであれば、設置を検討する価値はありますか?

A:EV充電器は、 必ずしもマンションの資産価値を上げるとは言い切れないように思います。マンションでは、平面駐車場を除き、 機械式駐車場では各駐車区画に充電器を設置することができません。そのため、どうしても共有施設と言う共同利用と言う形を取らざるを得ません。

この場合、設置費用は補助金により大幅に削減されますが、運用面で課題が残ります。使った分の料金課金をどうするのか、使っている時間帯をどのようにコントロールするのか(充電が終わった段階で車をどかしてもらえるのか)など課題があります。そのため現在導入しているマンションでは、ほとんどが運用を外部業者に委託しています。

運用を受託する会社では、機器の設置工事も実施してくれるので、 設置から運用までを一括してそちらに任せているところがほとんどです。

共同利用と言う観点から考えると、大型のマンションでは来客用のスペースがあったり、車両の一部に充電スペースを確保したりすることができますが、どうしても小型のマンションではスペースがありません。

仮に設置する場合、空車の区画があればそこを利用すると言う方法がありますが、現在空車がなければ、その一区画を共用化する、つまりその一区画の駐車料金を放棄するということになりますので、新たにEV充電施設を設置するメリットよりデメリットの方が多いのではないでしょうか。(特に都市部で、駐車料金の高い場合はよりメリットがないです。)

また、充電器の利用者はマンションの駐車場利用者に限定されますので 小型のマンションだと利用希望の台数も限定的でニーズも多くありません。一方で、マンションの規模が大きくなれば駐車車両も多く、それだ電気自動車の需要も多くなります。新築マンションでも標準的に設置されているところは多いため、ある程度規模のあるマンションにとっては必需品になると考えて良いと思います。

具体的に設置について考えてみます。仮に小型マンションで検討するのであれば、平面区画に対して充電器を設置し、その区画の料金を引き上げ、 駐車料金に充電する電気代を含めておく方法によれば、導入は可能です。この方法は、投資コストも低く運用コストもかかりませんので、オススメです。充電器も急速充電器である必要はありません。

大型マンションの場合は、前述の通り、来客用と兼用するか、またはそれだけの充電区画を要して、外部の業者(※1)に運用を委託して運用するのが現実的でしょう。外部業者は、急速充電器で運用する会社がほとんどですが、普通充電器で対応してくれる会社(※2)もあります。ニーズや設置可能台数によって選択すると良いでしょう。なお、今後市場が大きく変わる可能性があるので、今充電器を設置するのは時期尚早ではないかとお考えの管理組合もあると思いますが、これについて私は以下のように考えています。

少し前にヨーロッパの全面的な電気自動車化は少し先送りになりました。このことから、ガソリン車から電気自動車へ移行するまでの期間は長くなったと考えられます。現在の充電設備の設置、運用サービスを提供している各社の最低契約期間は5年というところが多いです。つまり、上記のような外部に委託する体制は5年間維持しなければならない一方、5年間ではすぐに電気自動車へは移行しきれないことから、現在の各社の提案を受けて早めに電気自動車への移行が可能なマンションを目指しておくのが良いと考えています。

むしろ、数年待ってから、5年縛りの契約を行うと、その契約満期は今から10年くらい先になってしまいます。この時点ではすでに潮目が変わっている可能性もあります。市場の潮目が変わるということは、今の事業者の採算が変わり、管理組合が事業者の倒産などに巻き込まれるリスクも上がるということなので、補助金の多い今は、住民の合意も取りやすく、導入のチャンスではないかと考えています。

(※1)外部業者は、スマホアプリで充電時間を予約するタイプが多く、クレジットカードで利用料と電気使用量を合わせて、各個人に請求してくれるため、時間管理と費用の回収という最も管理組合にとって悩ましい部分を、切り離して運営されます。

(※2)急速充電器は、一定の時間で充電できる台数は増えますが、満充電はできません。普通充電器では、満充電可能ですが充電時間が長く、それぞれにメリットデメリットがあります。

大規模修繕工事のセカンドオピニオンは有効ですか?

Q:工事監理を設計事務所に依頼している場合、工事中のアドバイスは不要ではないでしょうか?

A:設計が順調に進めば施工もスムーズに進むというご意見もあるかと思いますが、設計は主に机上で進められるため、全ての施工要領が詳細に示されるわけではありません。新築工事とは異なり、図面が存在しないため、どこをどのように修繕するかを客観的に判断することは、設計の仕様書だけでは困難です。このため、設計段階では質問と確認をしっかり行い、それを議事録に残しておくことが非常に重要です。

施工中に発生する課題は、設計時点で明示されていない事案に関する判断を求められることが多く、これは設計者や施工者の責任ではなく、むしろ施工現場で不可避的に発生するものです。工期中の課題発生は避けられませんが、管理組合としては工事期間が限られているため、即座に判断を下す必要があります。

この段階で、設計事務所や施工会社が提示する選択肢が本当に最善かどうか、他に選択肢はないのか、設計と施工の意見が一致しているのか、そしてその選択肢が管理組合にとってリスクやメリットをどのようにもたらすのかを評価するために、セカンドオピニオンが非常に有効となります。このような場面でのセカンドオピニオンは、我々が最もお客様に喜んでいただける瞬間と言えるでしょう。

正直なところ、設計段階や施工会社の選定段階で行われたアドバイスに対し、施工中に問題が生じた場合、その時のアドバイザーがいなければ、容易に設計や施工の内容が覆される可能性があります。したがって、設計期間や施工会社の選定のみのアドバイスを求める場合、セカンドオピニオンの費用対効果は低く、必ずしも必要とは言えないかもしれません。

大規模修繕工事の成否は、工事をいつ実施するか、どの部分を改修するか、そして誰をアドバイザーとするかによって大きく変わります。私自身も新築工事の現場を数多く経験してきましたが、改修工事においては新築とは異なり、見えない施工不良が起こりにくいため、施工会社の担当者は誠実に取り組んでいます。実績のある施工会社であれば、一定の成果は必ず得られます。しかし、さらに高い満足度を得るために、信頼できる優れたアドバイザーを選定することが重要です。

大規模修繕工事のセカンドオピニオンは必要か?

えっ!管理員が見つからない?

Q:管理員さんが募集できないので、管理員業務費を増やしてほしいと言われています。そんなことはあるのでしょうか?

A:管理員のなり手不足問題についての問い合わせを多くいただいています。もともと管理員という職業は、新卒者が選ぶ職種ではなく、定年後の再雇用としての就職先という印象が強いです。さまざまな条件が重なる中、不利な条件を超えて人を雇用するためには高い時給が必要であり、それを支払うためには、管理会社もそれに見合った受託費用が必要になります。

■社会的環境の変化

最近では、高齢化と労働人口の減少に対応するため、定年が65歳まで延長されました。この変更が管理員のなり手不足に大きな影響を与えています。60歳で定年を迎えた人が65歳まで再就職を考える意欲と、65歳で定年を迎えた人がさらに70歳まで働こうと考え。積極的に就職を探す人は少なくなります。

政府の発表によると、65歳以上の就労者は増加傾向にあるとはいうものの、管理員業務は機械化できないため、肉体的な負担が伴います。社会全体が人手不足であるため、再就職の選択肢が広がり、勤務地や労働条件に関する希望が通りやすくなっています。高齢者にとって、通勤時間が短い勤務地の方が好まれる傾向がありますが、マンションの管理業務は都市部に集中しているため、住宅地から離れた勤務地が多いという点が不利に働いていて、さらに肉体的負担も考えると再就職先の候補からどうしても漏れやすくなってしまいます。

■労働環境

管理員の勤務形態はマンションによって異なり、週3回午前中だけの勤務やフルタイム勤務など様々です。しかし、管理会社が十分な補充人員を確保していないため、一度就業すると長期休暇を取得したり、勤務時間を変更する自由度が低く、管理組合の許可がなければ休みさえ取れない場合もあります。このため、勤務日や勤務時間の融通性が低いことが、管理員業務が選ばれにくい理由となっています。

また、「毎日のように短時間勤務する」というのは、自由時間が多く、お小遣い稼ぎとして働くには魅力的に感じますが、それは家の近所で働く場合に限ります。通勤に電車を利用するような場所では、むしろ負担が大きくなります。実際、古い住宅街のマンションでは、このような勤務条件でも管理員の募集に困っていない地域もあります。

■管理員コストの構成

現在では、アルバイトであっても一定の勤務時間を超えると、社会保険料を支払う必要があります。これにより、会社負担分を含めた給料の14%が社会保険料として支払われています。つまり、時給1,000円の管理員でも、会社は実質的に1,140円を支払っていることになります。

さらに、往復の交通費や人員の募集費用も加わるため、都市部のマンションであれば、1時間あたりのコストがさらに上昇します。たとえば、片道1,000円程度の通勤費用を考慮すると、3時間の勤務で1時間あたりのコストが667円増加することになります。このようなコスト負担が管理員業務費に反映されているため、短時間勤務であれば、管理員業務費が1時間あたり2,000円を超えるのも当たり前になってきています。

話は少し変わりますが、最近は地方都市でもマンションが増加しています。これは、ある大手の管理会社の方から聞いた話ですが、管理物件のある地方都市でシルバー人材センターに管理員の募集を依頼したところ、なんと応募はおろか、閲覧者が0件だったそうです。これまでマンションがそれほど多く建っていなかった地域では、『マンション管理員』という職種自体が認識されておらず、就業先として誰も考えていないということのようで、こう言った形で管理員の募集に苦戦するということもあるようです。

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