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2023.03.13

理事長に質問攻めできないマンション管理士はいらない

[コラムの要約]理事長がマンション管理士へ具体的なオファーを出した場合、それが『相談』ではなく『注文』であることが多いということを書いています。
マンション管理士は、理事長が注文したことに対して言葉通りに反応することよりも、問題を解決することが重要であり、まず理事長がなぜそのオファーを出したのかを理解することが重要であり、そのために質問攻めをする必要がある、、という内容のコラムです。

1.理事長からのオファーを「注文」と受け取るマンション管理士

理事長は「頼み方のプロ」ではなく、受け手側も理事長の真の意図を捉えずに進めるとトラブルになりますよ、という話です。このことを理解していないマンション理事長やマンション管理士(管理会社フロント担当者もそうですね)の多くが、多くの無駄を引き起こしています。

例えば、マンション管理の現場(理事会や総会の場)で、理事長や区分所有者から『◯◯の件で悩みを持っている。うちのマンション管理規約には▽▽と書いてあるので、▼▼のように改定すれば解決できると思っているのだが、他にも改定すべき点があるか、自分は専門家でないのでお願いしたい。可能か?報酬はいくら?』といった、かなり具体的なオファーがあったとします。

新人のマンション管理士や、管理会社の若いフロント担当者を見ていると、たいていが「可能です・了解しました・難しいです・報酬は○○円です・頂いている月額報酬の中で対応します・上司に相談します」 と『YESかNOか』という観点で回答します。

少し慎重なマンション管理士なら

具体的に管理規約をどのように変えたいのですか?

納期はいつまでですか?

管理規約の新旧対比表は必要ですか?

総会での説明サポートもしましょうか?

といった『ゴール』に関する質問をするでしょう。

でも、僕的には、両方とも初期対応としては『まったくのNG』です。
正しい『最初の反応』は

なぜ、管理規約の改定が必要だと考えたのですか?

です。この理事長が『管理規約を改定しなければならない』と考えるに至った『経緯・動機・背景・事実関係』つまり原点を聴くのが、一番最初にやるべきことです。

何故か?このケースにおける理事長からの『相談』は、実は『相談』ではなく『注文』だからです。

2.患者から「◯◯薬を出せ」と言われて対応する医者はいない

もしあなたが、頭痛が酷くて我慢ができなくなり、医者に行ったときに、どの様に相談しますか?

『頭痛が酷い。○○に原因があるから、▽▽の治療をしてほしい。』と『注文』しませんよね?
まずは医者から『どうされました?』と聞かれて、『実は昨晩の○○頃から、■■のような症状が出て、今朝になった酷くなった』と、自分に起こった事実を話すはずです。

なぜなら、単なる頭痛なのか、肩こりから来ているだけなのか、脳に腫瘍ができているのか、薬の処方で良いのか、検査が必要なのか、今すぐ入院するレベルなのか、、、と言った「回答や提案」を考えるのは医者だからです。

もし患者が『頭痛の原因は多分○○だから、薬を出してほしい』と『注文』して、二つ返事で患者の注文通りの薬を出してくる医者がいたら怖くありませんか?あなた(マンション管理士)がやっていることは、これと同じなんです。

患者の症状を正確にヒアリングし、原因を特定・推定し、治療方法を決めるのは、患者じゃなくて医者です。
理事長の悩みを正確にヒアリングし、原因を特定・推定し、対応方法を提案するのは、理事長じゃなくてマンション管理士です。

相手の言うことを『注文がきた』と即『YES・NO』と回答して良いのは、飲食店の店員だけです。『明太子とイカの和風パスタをお願いします』と『注文』されて『なぜそのパスタが食べたいのですか?』とは聞きません。注文したお客様の顔を見て『いや、あなたの今の表情や声の調子、しぐさからすると、パスタではなくイカ墨のリゾットの方がよろしいですよ』と言ってくれる店員さんがいたら、僕的には非常に興味をそそられますが、99%の人はクレームをつけるでしょう。

パスタのオファーは『注文』であり、 理事長からのオファーは『相談』です。『客自身が、ゴールへのたどり着き方を理解していないで、自分の思い込みを添えて注文しているように聞こえるだけで、実は相談』です。

理事長から具体的な進め方などの意見も含めた『相談』が来たら『なぜそれをしたいのか』を良く聞き直すことが重要です。

3.マンション管理士に問われる「質問力」

経営コンサルタントである大前研一さんは『良きコンサルタントは質問力がずば抜けている』と言いますが、全くその通りです。
クライアントの相談や質問の『隠れた意図』をあなたが理解するまで、安易に『注文』を受けたり、答えを出してはならないのです。

先程の理事長からのオファーへ安易に対応し、言われた通りの内容で正確な管理規約改正案を作ったとしても、実際に理事会や総会に諮ったとき『なぜ管理規約を改定する必要があるの?』『もっと検討することあるよね』と反論が出るか、何となく承認されたとしても『間違った(ズレた)ルールが合法化』されただけであり、将来に禍根や矛盾を残す可能性がでてきます。

理事長からのオファーを『注文』と受け取らず『相談』だと考え、理事長に質問を重ねていくと、新たな事実が出てきたり、理事長の本音がでてきたり、理事長の頭にもなかった潜在的な想いが見えてくるものです。潜在的な想いは理事長本人も気づかなかったものです。

理事長から深く聴けば聴くほど、

なぜ管理規約の改定が必要なのか?

細則の改定や制定でも目的を達成できるのではないか?

ルール改定よりも別のアプローチをした方が良いのではないか?

理事長の思い過ごし(杞憂)ではないか?

今すぐに改定する必要はないのではないか?

そもそも理事長の発想や考え方が間違っているのではないか?

今のままがベターなのではないか?

規約改定どころではない、大ナタを振るわないとダメなのではないか?

という仮説が出てきて『管理規約の▼▼を改定したい』というオファー自体がどこかへ飛んで行って、全く別の提案になることがあって良いし、むしろそれがあるべき姿なのです。
僕が理事長にヒアリング(質問攻め)すると、当初理事長が注文してきたこと(管理規約の▼▼を改定してほしい)と、僕からの回答や具体的な進め方が全然違うことがとても多いのですが、それで良いのです。

大切なことは『理事長の注文を言葉通りに受け取って反応すること』ではなく『問題を解決すること』なのですから。

『頭痛が酷い。薬を出してくれ』と相談(注文)されて、『何言ってるんですか、即入院ですよ』という回答を出すのが、できるマンション管理士の仕事です。

4.理事長にもアドバイス(問いかけ方を変える)

マンション管理士や管理会社のフロント担当者に依頼するときは『注文』ではなく、医者や弁護士へ話す時のように『○○で悩んでいるのだけど、どうしたら良いと思う?』という『相談』から入ると、「相手に課題解決能力がある」なら、質問攻めされて、より間違いない答えに導いてくれるでしょうし、質問に答えていくうちに自身の頭も整理されて、課題が明確になっていく」なんてこともあります。

マンション管理士から質問攻めがされなかった場合は、そのマンション管理士はそのうちAIに取って変われてしまう人だと諦めましょう。
もしそのマンション管理士が僕の会社のメンバーだったら、、、こっそりと教えてください(笑)

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