■これまで当社でマンション管理士として働きたい・修行したいという人のほとんどが、僕に同行してマンション管理組合の現場を見てもらって、その感想を聞くと「僕の目指すマンション管理士像に近いか」「鼻っ柱を折らなければならないのか」少なくとも「僕のこのブログを読んできているのか」がわかる。
■で、僕が良い意味で最も衝撃を受けて惚れてしまったのが、最近ジョインしてくれた妹尾さん。
最近、僕がコンサルとして支援している、都内の某大規模マンションの専門委員会へ同席してもらって、翌日に僕へ自発的に感想を送ってくれた、その内容が「よくわかっとる!我が意を得たり!」と感動モノだった。
僕よりも一回り以上も下の世代なのに、そしてほとんど何も教えていないのに、どうしてすぐにわかるんだろう、と。
ーーー以下、妹尾さんの感想(一部読みやすく修正・詳細を割愛)ーーー
何より今回感動したのは、深山さんがいつも「(マンション管理士に)知識はいらない」と言っていたことの意味がわかったことです。
アルコーブの使用方法について、組合員(専門委員)同士がディスカッションしているときに、思いが溢れてヒートアップした方がいました。
※アルコーブとは?
深山さんはなるほどと一切否定もせず遮ることもせずに、受け止めていました。
そのときに組合員さんの体がこちらに向いて、一生懸命話してくれるようになった瞬間がありました。まずそれに気づいたときは…大反省しました。
これまで自分のものさしで物事を判断していたことや私にとって些細なことも、相手にとっては一大事であることを気付かされたし、そういう姿勢で聞いてしまうと相手は絶対本音も話してくれないし、打ち解けるなんてありえないなと・・・この人は聞いてくれる、受け入れてくれるって思って貰わないと信頼はスタートすらしない。それでは、意見を引き出すなんてありえない話です。
それに気づいてからは見え方が変わり、やっと発見できたのが以下です!
・大人用の自転車をアルコーブに停めてしまうことが問題であるという議論をしていて、子供用なら許容するといった意見が多く出たときに、
組合員『子供用は子供が乗っていれば子供用??』
深山さん『どういうことですか?』
組合員『子供が大きな自転車に乗ってても子供が乗ってたら子供用と言う人もいる。逆に折り畳める自転車は小さいから大人用だけど子供用というかもしれない。(略)~26インチの自転車を子供が乗っているから子供用という人がいた』
深山さん『えーそんな方がいるんですか!!そうですよねえ、70才の親からみたら40才の大人も子供は子供ですもんねえ笑 えーどうしましょうかねえ』
⇒組合員の方の意見によりインチで指定すると結論がでた。
気づきました・・・深山さん、今日一回も「答え」なんて言ってない。。
皆様の意見や本音を引き出す作業をして、解決策も組合員さんたちで出せるように導くことが役目。だから知識がなくてもできる。と言っていたのははこういうことなんだと!“と腹落ちして痺れました。
・問題を分解する
アルコーブの使用方法の問題として大人用自転車が止まっていることが問題。
(でも物品がおいてあること、その他使用方法も問題。)
これは、アルコーブの使用方法と自転車(駐輪)の2つの問題が隠れているので、2つに分けて考えないと、委員会が迷走してしまう。
そこで、深山さんは問題は2つであることは強調し、議論が迷走しないように伴走していました。
これも気づいた瞬間非常に面白くて痺れました。
ファシリテーションの本を読んでも深山さんのお話を聞いてても、腹落ちをしてない段階では、ただの知識のひとつでしかなかったのが、気づいた瞬間に本当に景色が変わって見えてすごく面白かったです!
コンサルティングというと、こちらがいっぱい助言して、いっぱい話すイメージでしたが、多くは話しすぎずに、相手の言葉を引き出し、話したくなる聞き手になることが大事でまずそれが入り口だと感じました。
ーーーここまでーーー
■マンション管理士=コンサルタント=「課題解決能力が必要」と定義すると、そもそも課題解決の第一歩は「クライアントの悩みの源流を探し当てること」「源流を探し当てるためには、まずはクライアントの思いや事実関係を(もうこれ以上は出て来ない、というレベルまで)じっくり聴くこと」にある。
そして『聴く=クライアントのすべてを受け入れることで信頼を得る』ことも課題解決の第一歩。
僕から事前に『これこれこういう観点で観察してね』とは一言も言っていないのに、これにすぐに気付くって、簡単なようでなかなかできないんじゃないかな。
そりゃマッキンゼーやボスコンやアクセンチュアの人ならわかるけど、マンション管理士になりたい人に、こういう暗黙知をもっている人はなかなかいない。
きっと若いときから人間関係で充実してきたんだろう、とすぐに分かる。
■この課題解決のための第一歩がわからないマンション管理士は、ほぼ仕事ができないし、できるとしたら「業界経験や専門知識といった圧倒的な形式知+ベテランの雰囲気」で威圧する、つまり「マンション管理士の『先生』がいうなら間違いない」という思考停止状態のクライアントから仕事をもらう、、、みたいなマンション管理士かな。
これはこれで飯が食えてれば良いのだけど、僕はこういう過去の経験や権威みたいなものを背景に仕事をするのは絶対に嫌だな。
彼女はきっと、マンション管理士でなくてもどこでも通用する優秀な人。形式知的な仕事がAIに取って代わられる時代が確実に近づいている中で、人間社会の調整のような、まだまだなくならない(一層求められるであろう)仕事で重宝される人材であろう、と、久しぶりに僕の心が震えた、奪われた、という話。