前回コラム『(20~30代限定)マンション管理士として「独立起業・年収アップ」するための準備とは(環境編)』 では、マンション管理士の資格を取得してもなかなか飯が食えない人に最も不足している『マンション管理業界の知識や、必要な経験』を得るための方法を書きました。
次に、マンション管理士として実際に管理組合から仕事を引き受けることができた場合を想定して、求められる(身につけておきたい)技術(能力)について書いてみます。業界知識や経験を除いた『技術編』として記します。
一言でいえば「コンサルティング能力」に尽きるのですが、この中身を分解してみます。
大切なことは「コンサルティング能力=管理会社のフロント担当者との『違い』になる」「その違いが管理組合にとって利益になる」です。
まずは「理事会役員や管理会社フロント担当者が、あなたに心と口を開いてくれる」環境を作る必要があります。これがないと「2.のヒアリング能力」へ進むことができません。
シニアのマンション管理士で、現役時代にそれなりの企業でそれなりの地位についた人ほど、理事や管理会社の前で妙に「先生ぶる」傾向にありますが、そういうプライドみたいなものはコミュニケーション能力を阻害するものであり一切不要、邪魔です。
次に、ちゃんと話を聴きましょう、ということです。
マンションで発生する個々の課題について、その課題が発生した背景やその後の経過、現在の様子、そしてどうありたいのか(どのようなゴールを目指したいのか)を、理事会役員や管理会社フロント担当者など関係者から「聴く」。
状況を把握せずに自分の専門知識を喋るのではなく、相手が持っているファクトを徹底的に聴き出すことが、課題解決の第一歩です。
会話量は「関係者:95、マンション管理士:5」位を意識して、とにかく聴きまくることです。
2.で事実情報を集めた上で「管理組合の目指すゴールがどこにあるのか」を整理しまとめる能力です。
理事会役員は他の団体の構成員とは異なり、共通の理念や目的・目標を持って集まっているわけではなく、能力や価値観・熱意にかなりのばらつきがあります。そしてそんな理事会役員の背後には多数の区分所有者がいます。
理事会役員から発言を引き出し、出てきた発言に対してさらに他の理事会役員からの発言を引き出し、、、を繰り返しながら、これら全ての関係者に共通の(または最大公約数の)利害がどこにあるのかを探し出し、目指すべきゴールを導き出す必要があります。
これができないと、特定の声の大きな理事の意見や希望に流された提案(つまり全体の利益になっていない提案)へとズレていく可能性が極めて高くなり、後でトラブルになるリスクが増大します。
2.で集められた事実情報をもとに、3.で関係者の目指すゴールが見えてきたところで、筋道立てて整理し解決案を提示する能力です。狭義の「コンサルティング能力」ですね。
大切なことは、課題に対して考えられる解決案を複数用意し、それぞれメリット・リスクを比較した上で、最後は複数の中から「あなた達にはズバリこれ!」とよりベターな案を出し切ることです。
やってはいけないのは「案を複数出して、あとは理事会役員に選んでもらう」です。自分の中で「この案がこのマンションにとってベスト!間違ってたら責任を取る」くらいのつもりで、自分が信じきれるまで思案して、出し切ることです。
4.でマンション管理士からの提案が理事会で受け入れられたとしても、最後は総会で区分所有者へ報告する責任があります。内容によっては賛否を問う必要もあります。
そこで必要なのは「総会資料への記載(文章や参考資料を通じての説明)」と「総会の場における理事会役員に代わっての説明(質疑回答含む)」をマンション管理士が責任を持って対応することです。自らが矢面に立って説明しても良いし、理事会役員が主体的に説明する理事会であれば、その説明をサポートするでも良いです。
以上が、マンション管理士として必要な「技術」です。もちろん一朝一夕でできるものではありませんが、日々意識して取り組むことで必ず技術は向上します。
僕は元々コンサル会社出身ではありません(不動産仲介→管理会社出身)。必要な技術は、本を読んだりコンサルティングファーム出身の区分所有者から学びながら成長できましたので、失敗しながらでも粘り強く取り組み続けることで必ず身につくことを保証します。