「プロ理事長」とは、マンション管理組合において、専門的な知識や経験を持った人や企業が、区分所有者に代わって理事長を務めることを指します。この制度、業界用語では「理事長代行」とか「第三者管理」「管理者管理」と呼ばれています。
2012年にマンション管理業界を管轄する国土交通省が発したレポートで、このプロ理事長役として「弁護士や公認会計士、建築士など、それぞれの分野での経験や専門知識を持った人」のほか「管理組合のアドバイザー役として創設されたマンション管理士」を想定していました。
お陰様で私が経営するマンション管理士事務所においても複数の管理組合のプロ理事長役をお引き受けしており、年々お問い合わせが増えていますが、その多くが「高経年マンション」「小規模マンション」「投資型マンション」のように、区分所有者による理事会運営が年々先細りしがちで、かつ管理会社からの支援が受けにくい形態のマンションです。
プロ理事長は、マンションの維持管理や修繕計画の策定、管理会社や各種メンテナンス業者・保守業者・修繕工事業者の選定と管理、法律や条例の解釈・適用など、管理組合の重要な意思決定において専門的な見地から判断し意思決定を行います。さらに、管理組合の運営に必要な文書の作成や手続きの代行、住民との調整など、これまで区分所有者から選出された理事長が行うべき幅広い業務を担当することになります。
プロ理事長は、管理組合を企業に例えるなら「代表取締役」のような、最重要な役割を担いますが、その任命には適正な選考プロセスや業務実績が必要です。
また、当然ながらプロ理事長はボランティアではなく、管理組合は報酬を支払う必要があるため、「理事長のなり手がいないから」という理由だけで安易に活用することは財政的なリスクにつながる可能性があることから、費用対効果を見極める必要があります。
マンション管理士の今後の活躍次第では、このプロ理事長業務は「専売特許(独占業務)」とまではいかなくとも、それに近い市民権を得る仕事になると見ています。