日本の分譲マンションにおいて、理事長代行(理事長を外部のプロフェッショナルに委託する)の需要は増加すると予測します。
理由は以下の通りです。
高齢化社会の進展に伴い、建物の高経年化、区分所有者・居住者の高齢化、入居者における外国人比率の増加、コロナ禍を経てオンライン理事会や総会ITを活用したツールの活用が一般しつつあるなど、管理組合運営は年々複雑化しており、マンションの代表である理事長が担う業務の負担がますます増大することが予測できる。その負担を軽減する(又はなくす)ために、理事長を外部から招聘することが考えられる。
マンションのオーナー(区分所有者)に対する情報提供やコミュニケーションには、スムーズかつ適切なものが求められる。理事長役を専門に行う理事長代行への委託によって、オーナーに対する情報提供やコミュニケーションが円滑に進められることが期待できる。
基本的にボランティアで、義務やプレシャーが多い理事長を区分所有者が務めることは「ハズレくじを引いたに等しい」と考える人が多い中で、有償であるが管理組合の運営(経営と言っても良い)に必要な専門知識や経験をもち、管理会社とのやり取り(報告受領や依頼・指示など)を的確に行える人材に理事長を委託するほうが、管理組合にとっても、個々の区分所有者にとってもメリットが大きいと考える人がますます増えていくと考えられる。
平成の失われた30年を経て、令和になって「コスト削減ありき」だけでなく「金銭負担が増えても専門性を買いたい・(自分が削られる)時間や精神的負担を軽減したい」と考える人が増えており「お金で管理(経営)を買う」という感覚が今後広まってくることが予測できる。
以上の理由から、今後は「区分所有者主体の管理組合運営」だけでなく「外部のプロ理事長へ業務を委託するマンション経営」つまり理事長代行の需要は高まっていくと予想します。
ただし、理事長代行の役割は管理組合の経営そのものを預かる、企業でいえば代表取締役のような存在であり、適切な経営だけでなくクリーンで開かれた運営をする必要があり、単に「専門知識がある」という理由だけではなく、マンションの資産価値を守り育てる高い理念と、高度な倫理意識が求められるでしょう。