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2023.03.04

(20~30代限定)マンション管理士として「独立起業・年収アップ」するための準備とは(姿勢・マインド編)

前々回コラム『(20~30代限定)マンション管理士として「独立起業・年収アップ」するための準備とは(環境編)』 では、マンション管理士の資格を取得してもなかなか飯が食えない人に最も不足している『マンション管理業界の知識や、必要な経験』を得るための方法を書きました。
また、前回コラム『(20~30代限定)マンション管理士として「独立起業・年収アップ」するための準備とは(技術編)』 では、マンション管理士として実際に管理組合から仕事を引き受けることができた場合を想定して、求められる(身につけておきたい)技術(能力)について書きました。

最後に、マンション管理士に必要なマインド、つまり心構え・姿勢について、僕の独断と偏見で書いてみます。

いくら技術があっても、マインドが悪ければ良い提案に結びつきませんし、お客様に見透かされます。また、悪いマインドで仕事をすると、段々と自分の心が苛まれます。「長く豊かに仕事をするために」マインドはとても大切な要素だと確信しています。

1.管理組合の利益を優先する(理事長におもねらない)

ここでは、絶対的な権限を持つ理事長に限らず「理事会や総会の場で声の大きな区分所有者」「他の区分所有者に大きな影響を与える区分所有者」も対象に、おもねらないことを指します。「黙認する」のもおもねるのと一緒です。

マンション管理士は管理組合(つまり区分所有者の全員)から報酬を得て、管理組合の利益の最大化を目指した助言をすることが仕事です。理事長や声の大きな区分所有者の意見と管理組合の利益とが合致するなら全く問題ありませんが、そうでない場合が往々にしてあります。

困るのが「自分(マンション管理士)の活用を管理組合に提案してくれた理事長」の意見(エゴ)が、管理組合の利益と合わないときですが、理事長に感謝しつつも何が本質なのかを冷静に判断して助言することが大切です。

理事長個人のエゴに基づいた意見を管理組合に取り入れることは、巡り巡って理事長個人へ跳ね返ってくるものです。また、そんな理事長の要望におもねって同意する(または黙認する)ことを、他のサイレント区分所有者は必ず見ています。

理事長や声の大きな区分所有者と向き合うときに最も悩ましいのが「彼らのプライドを傷つけずに、彼らが間違っていることを伝える、意見を取り下げてもらうこと」です。僕がマンション管理士として駆け出しのころ、伝え方を間違えて大クレームになり、理事長の権限で顧問契約を解約されられた上に、2ちゃんねるに散々悪口を書かれまくったことが何度もあります(笑)
全く後悔していませんが、書かれなくても良いならそれに越したことはありません。

経営者を経験したことのないマンション管理士(=企業勤めを経て独立したマンション管理士)は、どうしても組織の中で「上司には従う」「忖度する」つまり上下関係がある組織のなかで、良く言えば「バランス良く」悪く言えば「正しいと思うことを言えずに」生きて来ざるを得なかった面があると思います。
マンション管理士として独立した後で、同じように理不尽な意見や要望におもねるのか、本質を追求して正しい提案を貫くのか。マンション管理士としてのマインド・姿勢の分かれ目です。

2.普遍的+長期的な視点で描く(提案に時間軸を持つ)

世の中の変化のスピードが年々早くなっています。「流行やトレンド・テクノロジー」という意味では、短期で考える必要があり、長期的視点で検討することは困難です。スマートフォンなどのデバイスやLINEなどのグループチャットが世の中に出てくる前と後で、管理組合の運営方法もかなり変わりましたが、これらはわずか10~15年前の話です。共用部のインフラも日進月歩で進化しています。

一方で「時間とともにほぼ間違いなく移ろっていくもの」があります。例えば広く日本で言えば「人口減少・少子高齢化」でしょうし、自住用マンションの管理組合で言えば「区分所有者の高齢化」「子供世代の独立転居によるシニア区分所有者の孤独化」「ペット飼育の増加」「専有部分の賃貸化(外部オーナーの増加)」「これらに伴うコミュニティのあり方の変化」「意識の高い区分所有者(理事長経験者)の退去・死亡」「建物の高経年化」「設備の陳腐化」「ルール(管理規約等)の陳腐化・形骸化」などが考えられます。

さらに「時代が変わっても普遍的な真理」もあります。例えば「マンション=不動産の資産価値を守りたい・高めたい」「トラブルなく気持ちよく住みたい」「共用部分は清潔さを維持したい」「管理費や修繕積立金などのコスト負担増加を極力抑制したい」などは、言葉には出さなくても多くの区分所有者にとって共通の願いであり、普遍的な真理なのではないでしょうか。

僕はマンション管理士として管理組合へ助言する時は、
・短期でみるべきものは最新情報をアップデートすること
・長期に移ろっていくものを捉えて(想像をめぐらして)おくこと
・いつになっても変わることのない普遍的な真理を押さえておくこと
を、
・マンションの立地や築年数・間取りタイプ・客層などを意識して(組み合わせて)するようにしています。

目の前で困っている区分所有者の意見や要望へ、敏感に反応して提案することは、短期的には喜ばれますが、長期的に耐えられなくなる可能性があります。
自分が提案した内容が「短期・中期・長期」にみて整合性が取れているかを意識することは、そのマンション管理組合が右へ行ったり左へ行ったりしないか?将来的に区分所有者を混乱させないか?という視点でとても重要です。

3.三方良しを目指す(管理会社や施工業者の利益も大切)

管理会社や各種メンテナンス会社・修繕工事の関係者(施工業者や設計事務所など)などの関係者が「自己の利益を最優先し、管理組合を蔑ろにしている」場合は別ですが、そうでないという前提の上で、僕は「管理会社などの関係者にとっての一定の利益や仕事のしやすさを理解して管理組合へ助言することが、最終的に管理組合の利益につながる」と確信しています。

マンション管理士のほとんどが「自分の役目は管理組合のアドバイザーだ・管理組合から報酬を得ている」「管理会社は悪・敵対関係・うまく使いこなしたい」という考え方のもとで、管理組合のために良かれと思って管理会社と戦ってしまいますが、これは完全に間違いです。

マンション管理士のなかには、自分が住むマンションで理事長を経験し、管理会社の負の面を見て来たり、管理会社を下請けのように使ってきたりしたような人がいます。この手の人材がマンション管理士としての独立すると、必ず管理会社に対して常に否定的な目線で臨むようになります。

僕は管理会社を2社経験し、かつ現在は自らクローバーコミュニティという管理会社の経営もしています。従って、管理会社の良くない面があることは理解しつつ、彼ら(特にフロント担当者や管理員・清掃員など現場スタッフ)の業務内容や考え方・悩みなども十分に理解しています。
もちろん管理委託費のボッタクリや修繕工事の受注を自社グループへ誘導しようとする「管理組合の利益を蔑ろにする行為」に対しては徹底的に対処しますが、それ以外については、極力管理会社の想いにも応えるようにしています。管理会社に一定の収益や働く人のモチベーションが得られることで、管理組合に対し良いサービス提供がされれば、最終的に管理組合の利益になるからです。
ですから、時には理事長や区分所有者が管理会社等の関係者に対して理不尽な要求をしたり、管理会社等の仕事内容や苦労を理解せずにクレームをつけようものなら、マンション管理士として間に入ってフォローしています。

管理会社等と「なあなあ」「仲良し」ではなく「是々非々」「全体最適を目指す」ということです。
こういった姿勢を示すことは、管理会社等からの信頼を得やすくなり、仕事がしやすくなる、という現実的な側面があることも補足しておきます。

4.自分の提案に責任を持つ

自分の発言や提案に責任と覚悟を持つ、という当然の姿勢ですが、意外とできないマンション管理士が多いのではないかと見ています。

マンション管理士を「専門家」と定義すると、専門的な見地から管理組合へ助言することが仕事になります。また、マンション管理士を「コンサルタント」と定義すると、管理組合へ具体的な提案を提示し、行動に移すようサポートすることが仕事になります。

しかしプロとしての助言や提案を受けるのは、マンション管理の素人集団であるマンション管理組合(その責任者である理事長)です。「助言を聞き入れるか・提案を実践するかは管理組合次第」「自己責任で」「しらんけど」という逃げの姿勢ではダメですし、そもそも逃げの姿勢=助言や提案に自信がない(深掘りできていない)ということでもあります。

もちろん助言や提案が100%正しいということはできませんが、100%を目指して考えに考えて出した提案であることが重要であり、この提案を受け入れてくれた管理組合のために、提案が成就するよう覚悟をもって全力で取り組むことが重要です。
僕は過去に、管理組合が僕の提案を実践した結果、マイナスに作用してしまったことを反省し、顧問料を自主的に返金したことがあります。経営的に痛い時期のことでしたが、覚悟を示すことはお客様にも自分にも重要であったし、痛みを伴うことで自身の肥やしになりましたから、いまでも良かったと思っています。

以上が、マンション管理士として必要な「姿勢・マインド」です。これらは心の持ち方の問題であり、やろうと思えばすぐにできることです。
よくよく考えてみれば、このマインド・姿勢は、マンション管理士の仕事に限らずどんな仕事でも通用するものです。

最後に、これらの姿勢やマインドを貫くとき、一番苦しいのは「起業して日が浅いときに、これらの姿勢を貫くことで、エゴを持った理事長や声の大きな区分所有者から仕事を解約させられてしまい、収入が先細ってしまう」ことです。
僕も経験しました。

僕は、自分の利益は最後に取っておくように意識しています。
姿勢を保って耐えれば、利益は後から勝手に転がり込んでくるはず。お天道様が見ているぞ、と、耐えてきたことで、いまの自分があると確信しています。
とは言え、収入もないのに姿勢を貫きすぎてマンション管理士が継続できなくなっては意味がありません。極力自分の姿勢は貫きつつ、もっと将来に多くの管理組合へ貢献するために、いまはちょっとだけ「姿勢を崩す」ことも時には必要かもしれませんね。

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