深山州 マンション管理士2022年6月1日の日本経済新聞で、表題のニュースがありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC256970V20C22A5000000/
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マンション管理業界大手の穴吹ハウジングサービスが、小規模マンション特化の管理サービスを提供する、という記事で、概要はざっくり以下のとおりです。
ここ数年、大手・中堅の管理会社からは「利益の出にくい小規模マンション」の管理業務を終了させたり、委託料の大幅な値上げを求める(管理組合から振られるように仕向ける)など、残念ながら小規模マンションは多くの管理会社から「切り捨てられる・見捨てられる」対象となってしまいました。
そこに目をつけた穴吹ハウジングサービスが「管理会社の業務効率(=利益率)改善のために従来の管理サービス(業務の仕様)をできるだけ下げた形で、組合員が支払う管理費の値上げを抑えることができるようになり、小規模マンション管理組合にとって新たな選択肢を提供することになります。
業務の範囲を狭めること=質の低下、と考えてはいけません。何でもかんでも「良いものを安く」という日本人的な発想ではサービス提供側が疲弊します。
ここは「質の低下」ではなく「こういう条件で良ければリーズナブルですよ」という選択肢を提供したのだと思いたいですね。
あとは個々の管理組合が同社の新サービス仕様で満足できるかどうかの問題です。
次に数字を見てみます。
「5年後に1,000管理組合、20億円」=1管理組合あたり年200万円=月16,7万円の売上を見込む計算になります。
仮に1管理組合平均20戸として、月額の委託料を次のように仮定します。(機械式駐車設備なし)
事務管理業務費:40,000円
日常清掃員:30,000円(3つのマンションを掛け持ちして計9万円)
消防設備点検:8,300円
エレベーター保守:30,000円
定期清掃:13,400円
排水管清掃:8,300円
増圧ポンプ点検:4,200円
機械警備:15,000円
その他:5,000円
一般管理費:10,000円
合計:164,200円≒167,000円/月となります。
うち売上原価を102,780円/月、残り61,420円/月を売上総利益とします。
つまり1つのマンションから年間737,040円の利益をあげることができます。
フロント担当者の平均年収を450万円、一人あたり売上を1,125万円(売上の2.5倍)と仮定すると、
1,125万円÷73.7万円=15.26 ≒ フロント担当者1人あたり15棟を担当できれば、大規模修繕工事などの修繕工事を自社受注したり施工業者からの紹介料(リベート)を考慮しなくても経営が成り立つ計算になります。
業務内容を大幅にスリム化し、フロント担当者の負荷が下がれば、一人当たり15棟(しかも全て小規模マンション)は十分に実現性があります。
ちょっと甘いかな。
とはいえ、世の中の管理会社の殆どが「管理委託料」だけでは経営が成り立たず、個々の管理組合から大規模修繕工事や日々の営繕工事を受注することで経営を成り立たせています。同社の事業にも「リフォーム」つまり修繕工事ビジネスあることから、「毎月の委託料はリーズナブルに」し「管理組合との信頼関係を醸成し」「修繕工事の受注へとつなげる」ことを意図していることが推察できます。
・コンセプト:良し
・サービスの質:良し悪しはお客様が決めること
・価格:実現性あり
・利益率向上ポイント:修繕工事ビジネスか
こんなところでしょうか。
僕が経営する管理会社「クローバーコミュニティ」は、別に小規模マンションの受注を目指して立ち上げたわけではありませんが、これまでのところ結果的に「小規模マンションの駆け込み寺」となり、受託するマンション1棟あたり平均30戸強と、まさに同社の新サービスにおけるターゲットと重なります。小規模マンションにとって選択肢が増えることはとても良いことです。
いずれにしても、最初に書いた通り「大手・中堅の管理会社が小規模マンションの管理業務を切り捨てる」中で、新たな選択肢が現れるのは小規模マンションの管理組合にとって歓迎すべきことであり、クローバーコミュニティの良きライバルになるのではないか、と考えています。
業界が活性化することは大歓迎で要注目です。