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2023.03.04

[意外]マンションの理事会を廃止したい管理組合がジワリ増加

区分所有者のほとんどが「管理組合の理事はできればやりたくない」でしょうから、その気持ちを拡大すれば必然的に「マンションの理事会を廃止できるならしたい」という願望に至ってもおかしくありません。
もともと「うちのマンション、理事のなり手がいない」「理事会役員の定数が埋まらない」「理事長だけは誰もやりたがらない」と言った管理組合の悩みはずっと前から顕在化していました。

ところが「マンションの理事会を廃止したい!」という潜在的なニーズが、この2~3年の間で少しずつ顕在化し、実現しています。
当社(メルすみごこち事務所)へ「理事会を廃止したい」「理事長を代行して欲しい」といった趣旨のお問い合わせが増えていて、実際に理事会を廃止する(=当社がプロ理事長として就任する)事案が増えています。

そこで、今回は「え?本当に理事会を廃止することができるの?」について解説します。

1.法律上「複数の理事会役員」は必要ない

いわゆるマンション法(区分所有法。1964年に制定)には「マンションを建てて分譲したら理事会を作りなさい」とは書いておらず「管理者(代表者)を置きなさい」とだけ書かれています。
つまり、法律上は「管理組合には理事長1名のみ」がいればOKなのです。(管理組合法人の場合は別途監事を置く必要あり。)

しかし、どのマンションも、新築分譲時に制定される管理規約(管理組合のルールブック)には、「理事会役員」として
理事長:1名、副理事長:1名、○○理事:○名、監事:1名
などと「複数名が必須」な前提で記載されています。

マンション管理業界を管轄する国土交通省では「理事会役員は、概ね10世帯に1名の割合で選出する」ような例示をしていますから、マンションデベロッパーや管理会社はこれに倣って「50世帯なら理事会役員5名」「100世帯なら10名」と役員の数を決め、それぞれ必要そうな役職も設定した管理規約の案を作成します。

ですので、ほとんどのマンションでは複数名の理事会役員が選出されますが、上述のように法律上は「理事長1名でもOK」のため、管理規約を「うちのマンションは理事長1名のみ」と改定すれば、複数の役員は不要になるのです。

2.法律上「理事長は区分所有者以外」でもOK

次に、ほとんどのマンションの管理規約には「理事会役員は、区分所有者から選任する」と書かれていますから、マンション購入者(区分所有者)は当然「自分にもいつかは理事会役員の順番が回ってくる」と認識するのではないでしょうか。

しかし、マンション法(区分所有法)には「理事会役員は、区分所有者から選出しなさい」とは一言も書いていません。

3.つまり「誰でも良いから理事長1名置きなさい」
上述の1.と2.とを掛け合わせると「管理者(代表者)を、区分所有者でなくても良いから1名は置きなさい」ということなのです。

もちろん、マンションの代表者である理事長になる方の適正や能力などは熟考する必要がありますが、単に「複数名必要?」「区分所有者でなければダメなの?」という問いへの回答は、法律上いずれも「必ずではない」のです。

4.そもそもは「区分所有者が主体」の管理を前提に

ではなぜ「法律では理事長が1名で、かつ区分所有者でなくても就任できるのに、実際の管理規約では理事会役員を複数名にして、かつ役員資格を区分所有者に限定している」のでしょうか?

僕が考える「理由」は、世の中に分譲マンションが出始めた昭和中期の頃の行政や不動産デベロッパーが、次のように考えたからではないかと推察します。

確かに法律(マンション法)では、「理事長1名、区分所有者でなくても良い」としているが、適当な理事長役を外部から招聘することの発想がなかったし、どのような人材が適任かの見極めも困難であった。

マンションの管理運営は所有者が行うべきであり、個々の区分所有者が管理組合という団体を形成し、主体的に管理運営するのが前提という固定概念があった

町内会や自治会・PTAと同じように、複数の区分所有者が持ち回りで就任しすることが妥当であると判断した

町内会やPTAと異なり、素人集団である管理組合のサポート役として管理会社を入れることができるため、区分所有者が主体でも運営はやっていけると考えた

これらの理由から「管理規約では理事会役員を複数名にして、かつ役員資格を区分所有者に限定した」のだと推察されます。

5.区分所有者主体の管理に限界を迎えるマンションが

しかし、前述4.で示した理由でスタートした「区分所有者が主体で運営するマンション管理」が、マンションの高経年化に伴う区分所有者の高齢化や賃貸化(外部オーナーの増加)、投資マンションやリゾートマンションと言った新たな区分所有形態のマンションの登場などにより、その維持が難しくなってきています。
これらのマンションにおける「理事会役員(特に理事長)のなり手不足」「理事会運営の形骸化」「管理会社によるサポートの限界や悪意ある管理会社による搾取」といった要因により、平成に入ってから機能不全に陥るマンションが増え始めました。

そして、マンション管理業界を管轄する国土交通省が2012年に示したレポートで、この機能不全が社会問題化するであろうことを想定し、新たな管理組合の運営方式として「理事会は残したまま、理事長職を外部のプロに担わせる」のほか「理事会そのものを廃止し、外部のプロに管理組合の執行部を委ねる」案が例示されました。

そして、この「プロの理事長役」として、マンション管理士や弁護士・公認会計士・建築士などの専門知識を持った人」を想定したのでした。
もしかすると、マンション管理士という国家資格制度を創設した当時において、制度を作った方々が「マンション管理士にいずれプロ理事長役を担わせよう」と考えていたとしたら慧眼だと思います。

以上「本当に理事会を廃止することができるの?」について、その答えと、ここに至るまでの経緯を含めて解説しました。

実際にマンションで理事会を廃止して、外部のプロ理事長を招聘しようとすると、
・プロ理事長役の選定
・管理規約(ルール)の改定
・収支の見直し(プロ理事長への報酬支出)
の準備をした上で、最後は総会で区分所有者の3/4以上の賛成が必要であり、マンション内部の合意形成が必要です。

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