(2018年3月15日更新)
特に都心のタワーマンションや大規模マンションで、居住者から必ずといってよい程に話題となるのが、
・清掃が汚い
というものです。
マンションが高級であればあるほど、クレームになりやすいのが清掃です。
そして清掃がクレームになりやすい理由には、
・あまりにもグレーが多すぎる「清掃の仕様」
・管理組合(住民)が指摘しないとなかなか出てこない「課題点」
があること、そして、マンション管理業界が学ぶべきは
「ただ単に掃除するのではなく、生活差・美しさ・快適さへの飽くなき向上」
であることを、前回コラムでお話ししました。
※前回コラム 大規模マンションやタワーマンションで清掃がカイゼンしない理由
単に清掃の仕様を細かくしたり、清掃してほしい箇所を厳しく注文するだけでは、
「その場所が」「一時的に」改善されても、すぐ元に戻ってしまいます。
改善してもらうための第一歩は、管理会社(清掃会社)へ以下のことを伝えて、どんな改善ができるのかをヒアリングすることです。
(1)清掃スタッフが清掃を「単純作業の繰り返し」と捉えてしまい、清潔さに対するアンテナを張っていないのではないか
(2)管理会社に清掃のノウハウが乏しく、清掃業務を専門業者へ再委託(丸投げ)して依存しているのではないか
(3)清掃の改善提案(有償でも良い)を出すことを躊躇していないか
(4)ホテルや式場など、ワンランク上の場所の清掃と自分たちの清掃との違いを考えているか
まずは、管理会社(専門業者)に気付いてもらい、清掃のあり方を根本的に見直してもらうことです。
(1)清掃スタッフが清掃を「単純作業の繰り返し」と捉えていないか
清掃スタッフに限らず、その上司に当たるマネージャークラスや管理会社のフロント担当者が、清掃を「単純作業に繰り返し」と認識している、または長年作業を繰り返しているうちに、無意識に思考が固まっている可能性があります。
しかし、清掃は単純作業ではありません。同じ箇所を清掃することには変わりありませんが、居住者の入れ替わりや天候により状況は変わります。
また、単純作業化してしまうと、仕様に書いてある箇所以外に目が行き届かなくなります。
例えば、清掃スタッフに廊下の床を清掃するよう強調した指示をすると、壁や天井・器具に目が行かなくなる可能性が高くなります。
(2)管理会社が清掃を専門業者へ再委託(丸投げ)して依存していないか
管理会社が清掃業務を再委託することに問題はありません。しかし、管理会社が元請けとして責任をもって清掃専門業者と協議し、清掃専門業者をチェックする、という視点が欠けている管理会社がほとんどです。
管理会社の中に清掃のプロフェッショナルが少ないのも、丸投げ依存する一因です。
(3)清掃の改善提案(有償でも良い)を出すことを躊躇していないか
特に都心のタワーマンションや大規模マンションjの住民は、より良い環境づくり・清潔さや美しさの向上のために、現状の委託契約内容以外の改善提案を求めています。
しかし、管理会社はなかなか提案をしません。なぜか?
ひとつは、新築時に管理会社が積算し設定した清掃仕様の内容に誤り(不足)があったことを、自ら認めることになるのを恐れているからです。もうひとつは、値上げをお願いすることで、却って全体的なコスト削減を要求されることを恐れているからです。
管理会社は、管理組合(理事会)から「なぜ当初にちゃんと清掃の設計をしなかったか?」と責められ、現状の管理委託費の中で清掃業務を履行するように求められるのを恐れています。
しかし、新築当初に最善を尽くして考えた清掃仕様が現実と異なることは致し方ないことですし、住民のゴミ出しマナーが悪く、ゴミの仕分けに想定外の時間を費やさざるをえない、ということは十分に考えられます。
特に賃貸化が進み入居者が頻繁に入れ替わる都心のマンションや、外国人入居者が多く入居するタワーマンションでは、想定外のことが多いでしょう。
本質的に居住者は「快適な居住環境」をマンションに求めていますし、行き届かない環境を居住者に強いるほうが不誠実です。大規模マンションやタワーマンションは基本的に予算に若干のゆとりを持っているところばかりですから、勇気を出してどんどん有償提案してほしいものです。
(4)管理会社はホテルや式場などワンランク上の環境での清掃を勉強しているか
出張でホテルに宿泊するとよくわかりますが、清掃スタッフは実に整然とスピーディに働き、その姿勢・動きがホテルの景色の一部になり、使っている道具がホテルの商品の一つになっています。
一部屋当り○分で、やることは○○と○○と○○と、、、と、実にきめ細かい清掃仕様が決められている上に、廊下やエレベーターで宿泊客とあった時の対応も丁寧で見事です。
タワーマンションは「ホテルライクの生活」を売りにして販売している以上、それを引き継いだ管理会社もこのレベルを追求しなければなりません。
マンション管理業界は、清掃=仕様で決めた箇所を掃除するだけでなく、「自分たちの活躍により清潔な空間を居住者へ提供し、快適な暮らしを支え、美しい建物を維持し、資産価値を守る大切な仕事の一翼を担っている」という高い意識を持って取り組む必要があります。
また、クライアントであるマンション管理組合は「清掃を通じて何を求めているのか」を管理会社へ伝え、清掃の方向性を共有するべきです。
当社では「業務標準(共通のものさし)」を作成し、目指すべき・目標とするべき清掃の状態を明確化し、双方で共有するようなサポートもしています。KPI的な発想です。(興味ある方はご相談ください。)
そういうものがないと、いつまでも「あそこが汚い」「なんでやってくれないのだ」「いや、仕様通りやっている」という不毛な不満や言い訳をぶつけあうだけで、根本解決にならないでしょう。