2013.12.10~メルマガ第48号~
【今回のお題:我がマンションの植栽が育たない!(5)】
前号から、マンションの植栽を改善するための提案を
実際に成果がでている顧問先マンションの事例を出しながらを紹介しています。
◆マンション植栽の改良事例
『シニア主婦のひとことが130戸で1200万円を動かしたマンション』
(横浜市港北区、築30年弱で130戸のファミリータイプ)
(前回までのあらすじ)
大規模修繕工事を終え、建物が綺麗になった様子を見た
最高齢のシニア女性理事さんが、ボソッと『植栽がくたびれて古い感じ』
と仰ったことがヒントとなり、植栽の全体改修を提案し、造園業者による
「マンション植栽のデザイン提案コンペ」
を実施、見事に美しい庭を勝ち取りつつあります(まだ植物が成長段階なので)。
※前々回コラムはこちら!
https://e-sumigokochi.com/article/14970690.html
※前回コラムはこちら!
https://e-sumigokochi.com/article/14981265.html
◆大胆な植栽の全面入れ替えに課題や問題は?
当然、植栽の大規模な改良(植え替え等)は管理組合にとってビッグイベントです。
居住者間の合意形成が必要なことは言うまでもありません。
とくに「グリーンに関心のない方たち」にとっては、無駄遣いに思われる可能性もあります。
そこで、想定された課題・問題と、その対応策(考え方)について
当時居住者から上がった質問に答える形でまとめてみます。
皆様がこれから植栽を大きく改善するのに参考になる回答があると思います。
Q.なぜ管理会社に植栽改善の見積や提案を依頼しないの?
A.管理会社には植栽改良(バリューアップ)提案が期待できなかったからです。
基本的に管理会社の発想は「年間予算の中で同じ状態を『保守』をしていく」というもので、
定型業務を得意とする管理会社に思い切った提案を期待するのは難しいものです。
Q.なぜ『今』実施するの?
A.大規模修繕工事が終わった直後で、建物が美しさを取り戻したタイミングであった
建物とともに緑も美しく時代に合わせた改善を。
このように、タイミングについては何かの動機があると説明しやすいです。
Q.植栽の保守料が元々に比べ大きく増えるのはなぜ?
A.もともとの保守料金が安すぎて年々衰退する内容であったため、適正に戻しました。
こちらのマンションでは、もともとの年間保守料は50万円。
当社の見立てでは適正に行うと年80万円でしたし、
造園業者(コンペ)の改良提案に基づく保守料提案は各社年80~110万円でした。
こういったデータを取っておくと、「保守料金が上がる」ではなく、
「元々が安かった。だから年々緑が衰退していた」という説明が可能となります。
Q.個別の住民要望は受けてくれないの?
A.全体のデザインを優先するため、原則として個人の要望は受けません。
よく住民(特に1階の方)から「ここの場所は○○を植えて欲しい」
「自分でいじりたい」という要望を受けることがあります。
しかしマンション全体のデザインを含めたプロの造園会社による提案を
検討するプロセスにおいて、個別の意見を「民意」として耳を傾けすぎると、
部分的にちぐはぐなガーデンになってしまい、結果美しい庭にならなくなります。
ですので、原則として個別要望は受け入れないほうが、最終的に「民意」の反映につながります。
Q.予算は取れるものなの?
A.当社支援に基づき、あらゆるコスト削減を行い、原資を捻出しています。
電気料削減、保険料見直し、エレベーター保守料、リニューアル工事費の削減、
給水方式の見直し、その他、、、を取り組み、数字の成果(予測)を出して、
原資に当てる、と言う説明が多くの住民に対して説得力を増します。
Q.無駄使いでは?
A.大規模修繕工事の10分の1の予算を高いと見るか、安いとみるか、です。
また、マンション文化として「金銭価値に還元しにくいものを否定しない」
を創っていきたい、と考えていこう、と理事会の皆様と話し合いをしています。
そしてこの考えを住民説明会や総会・広報チラシ等を通じてしつこく叫び続けて
理解を深めて頂くことが重要です。論理よりも感情ですが、非常に大切な訴えです。
また、建物と緑(景観)がマッチして一体の美しさとなれば、
マンションを購入・賃借で入居を検討する人たちにとっての動機づけの一つとなり、
売買価格や賃料に少なからず影響を与えることも可能です。個々の利益に還元される
可能性の高い植栽改良を高いとみるか、安いとみるかは、理事さんの想い次第です。
Q.なぜ剪定などの植栽共通仕様を作って入札形式を取らないの?
A.住民と造園業者にマンションの庭を愛してもらいたいからです。
植栽は設備と違って『生き物』です。また多くの人の目に触れ、感じられる部分です。
成長させることも衰退させることも、美しくすることも見苦しくすることも、
すべてはマンション住民の想い次第、といえます。
また、従来の植栽保守の考え方では、管理会社が低額な保守予算を決め、理事会も意思なく承認し、
低予算の中でできる『維持』的な保守が当たり前でした。
(いや今でも管理業界のスタンダードです)
しかしその『当たり前』の前提を崩し、「自分たちのガーデンに愛着を持っていこう」
と方向を変えるだけで、共通仕様による入札見積もりは本質的なやり方でないことに気づきます。
また、造園業者にも二種類あり、指定された仕様に基づき低予算で作業する旧来型の業者と、
アドバイザー的な視点とデザイナー的なセンスを持って提案してくれる業者とに分かれますが、
後者からすれば、「我がマンションの庭を愛してくれ、長い目で見てくれる会社を探したい」
と頼まれれば、意気に感じて良質な提案を出してくれるものです。
Q.なぜ植栽を大きく入れ替える必要があるの?
A.手直しではなく抜本的な改良のためには、現状ありきの前提を崩す必要があります。
こちらの事例のマンション管理組合では、建物の大規模修繕工事が終わった後で
マンション全体を眺めた時、建物と植栽とのアンバランスさに気づきました。
このギャップを埋めるためには、現状からの小改善ではダメで、
樹木の植え替えを含む大胆な改良が必要です。
Q.一度改良したら、後の保守は業者へお任せすれば良いの?
A.新たな植栽を生むのは造園業者。それを育てるのはマンション管理組合です。
植栽に限らずどんなことでもそうですが、
プロの任せて丸投げよりも、多少なりとも自ら関与し続けることが
品質を保ち向上させるためには必要です。
そのための仕組み作りが必要となります(次号でお話しします)。
Q.コンサルタントは何をしてくれるの?
A.植栽の技術支援よりも、全体のプロジェクトを円滑に推進します。
これらの取り組み全般に言えることは、
・住民に問題意識を持っていただき、
・どうすれば解決するかのマイルストーン(道しるべ)を提示し、
・携わる理事さんや委員さんにやる気になって頂き、
・そのマイルストーンに則りプロジェクトを進め、
・住民との対話や広報作り等を通じて合意形成を図りながら、
・目標達成を図ること
が必要であり、これらをすべて支援させていただくのが
コンサルタントの仕事です。
よくお客様から
「植栽のプロですよね」と言われますが、
私は全くの素人、と宣言しています(多少はわかりますが)。
コンサルタントとして重要なのは、個々の植物に明るいことではなく、
問題解決することです。
次回コラムでは、こちらの事例でのマンションその後の様子
(住民による植栽チーム作り)についてお話しします。
(次号に続く)
★マンション植栽も問題解決と合意形成!理事会顧問業務とは?
https://e-sumigokochi.com/category/1263073.html
以上「本を買いすぎて積読状態におびえる」深山州でした!