2015.11.26~メルマガ第93号~
【今号のお題:マンション大規模修繕を成功に導く9か条 その19】
◆大規模修繕工事が終わった後に必ずすべき[5つの提案]その⑤(続き)
多くのマンション管理組合では、大規模修繕工事の完成(竣工)で「すべてのプロジェクトが終わった」とホッとされますが、
・このマンションを15年、30年、50年、100年~と維持したい
・将来売却したり相続するためにも、不動産としての価値ある状態を保ちたい
・長く快適に心地良く暮らしたい
と思いませんか?
大規模修繕工事後に管理組合として取り組むべきことの5回目、その2です。
[5-2 修繕積立金の値上げ「プラン」あれこれ]
修繕積立金の値上げを提案する際には、組合員に対し、
・大規模修繕工事において競争原理を働かせ、工事費の削減に取り組んだ
・長期修繕(積立金)計画を見直しした
・管理費会計(ランニングコスト)の削減を実施した
・削減されたコストを修繕積立金へ振り替えた
ことを説明しつつ、それでもなお「修繕積立金の値上げはやむを得ない」ことを丁寧に説明し、一人でも多くの共感者を作ることが重要です。
◆修繕積立金の値上げプランを考えよう
さて、修繕積立金を引き上げるにしても、どれくらいの額を上げたら良いか、どのタイミングで
上げれば良いか、悩みますよね。
私は、大きく「3+1」の値上げプランを記してみます。
1)段階値上げ方式
長期修繕計画を作成する、ほとんどの管理会社が管理組合へ提案する値上げ方式です。
つまり、数年(例えば5年)おきに、段階的に値上げ(例えば戸当たり月額5,000円UP)する方式です。
この方式のメリットは、一定年数ごとに少しずつ値上げすることで、
値上げタイミングでの負担感を軽減することができる点です。
一方で、築年数が新しいうちの負担を軽減する一方で、年数の経過と共に毎月の負担が増えるため、
40代の家庭が60代になり年金生活になると、値上げを反対する方が増え始め、
総会で値上げがなかなか承認されない、といったリスクが考えられます。
いわば年金の先送りのような状態になる傾向にあります。
この方式を採用する場合、毎回の値上げタイミングで総会承認を求めるよりも、
向こう数回分の値上げ(例えば5年後、10年後、15年後、20年後)の値上げも
最初の値上げの総会で包括的に承認を得ておき、5年、10年、、のタイミングで
自動的に徴収額がアップされるほうが、管理組合が修繕積立金を確実に集める
ことに繋がります。
2)均等積み立て方式
上記1)とは反対に、修繕積立金の値上げを原則1回だけ、大きく引き上げ(例えば月額10,000円UP)、
以降長期に亘り値上げをしない「均等積み立て方式」が、じわり評価されています。
マンション管理を管轄する国土交通省は「修繕積立金の値上げは均等方式が望ましい」
とコメントを出しています。
均等積立方式は、築年数が浅く、修繕工事がほとんどない若い段階から沢山お金を積み立てておこう
というもので、若いうちに貯金して老後に備えるのに似て、将来的な負担増を抑える効果があります。
一方で、築年数が浅く、建物がまだピカピカのうちに「将来に備える」ためとはいえ、
毎月の支払い額を大幅にアップすることに対する組合員の同意を得ることがとても難しく
合意形成が困難なのがこのプランの課題です。
特に高齢者は「老い先長くないから先のことは考えなくて良い」と否定的な方が多く、
また短期所有を考えている組合員は「どうせ売却するから将来のことは将来の組合員が考えれば良い」
と、まさに年金先送りのような意見が出やすいため、この方式を検討したい理事会は、
将来のために成し遂げる決意と丁寧な説明が必要です。
3)毎年値上げ方式
上記の1)方式は、修繕積立金の値上げを一定年毎に引き上げますが、毎年少しずつ引き上げる方式を
採用するところもあります。
例えば5年ごとに5,000円/月を引き上げるなら、毎年1,000円/月を引き上げるほうが
値上げインパクトがさらになくなります。
当面の間、毎年の決まった時期に決まった額を引き上げて徴収することを総会決議する必要があります。
この方式の場合、例えば20年の間毎年引き上げる場合、例えば月額5,000円だったのが、
20年後には25,000円になってしまい、気がつくとかなり高額な徴収額になります。
まさにゆでガエル状態です。
毎年の収支や長期修繕計画を見ながら、「そろそろ値上げを止めようか」などと
理事会(管理会社)がスイッチを入れる必要があります。
4)借り入れ(一時金)方式
この方式が単体で採用されるマンションはほとんどなく、たいていが1)2)3)に
プラスして、大規模修繕工事の際にどうしても修繕積立金が足りない場合、
金融機関から借り入れるか、一時金(現金)を組合員から平等に徴収することが
考えられます。
1)2)3)いづれの方式を採用しても、将来的な負担感が増大することは免れられませんし、
将来の負担は将来所有している方が負担すべき、という理屈もわからなくもありません。
今所有する世代も修繕積立金の値上げで負担するが、将来において100%完璧な資金計画に
せず、ある程度不足を予測しながら、実際の不足時に組合員で検討することも
現実的に多くのマンションで行われています。
また、「将来にいくらの支出が必要か」を正確につかむことは困難であるため、
ある程度の支出を想定しつつ、物価や税制変動・震災等の対策などは4)で乗り切るくらいの
幅を持った計画を立てることも、管理組合によっては合意形成上必要かもしれません。
一ついえることは、将来におけて「修繕工事ができず、劣化が進み、スラム化する」ようなことがないよう、
マンション毎に十分話し合い、長期的な収支プランのポリシーをもってぶれないことが重要です。
以上、大規模修繕工事が終わってからも続けて実行すべき5つの取り組みをご説明しました。
皆様としては、大きなイベントである大規模修繕工事を終え、どうしても一息ついてしまいたくなるところです。
しかしマンションの歴史は続きます。工事の完了と共に次の大規模修繕工事に向けて進み始めています。『大規模修繕工事はマンションの将来へのスタート地点』と考えて、一つずつトライしていきましょう。
自分たちの住まいのためであり、人生で高額な買い物である不動産の価値を守り向上させるために、是非チャレンジして下さい。
(終わり!)
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以上「理想の管理会社を作るぞ!!!と吼える」深山州でした!