2015.3.12~メルマガ第77号~
【今号のお題:マンション大規模修繕を成功に導く9か条 その3】
大規模修繕工事の発注方式とプレーヤー(関係者)とは?
マンション管理組合が大規模修繕工事そのものを発注する先は、もちろん施工業者です。
一昔前は、管理組合は施工業者を自ら選定する「責任施工方式」(後ほど説明します)が一般的でしたが、この責任施工方式に対する課題点が多いことから、最近では管理組合が先に設計監理者(設計事務所や管理会社内の設計監理部門)や修繕コンサルタント(セカンドオピニオン)を採用し、彼らと共に施工業者を選定する方式を採用するところがかなり増え、一般的になってきました。
ここでは、工事の発注方法やそのメリット・リスクについて記します。
[責任施工方式]
上述のように、マンション管理組合が②施工業者へ工事の一切を発注する方式です。
設計監理者も修繕コンサルタントもおらず、施工業者との信頼関係にのみ依拠した発注形態です。
メリットは、
①工事に携わる関係者が、発注者(管理組合)と受注者(施工業者)の二者しかいないため非常にシンプルであること
②上述ように相互の信頼関係があれば、建物の調査や修繕工事の設計・施工業者の選定作業はなく、比較的短期間で着工まで進めることが出来ること
③設計監理者や修繕コンサルタントがいないため、工事金額さえ安価であれば、他の発注方式よりも総工費が安く済むこと
です。
その一方で、この責任施工方式は、施工業者を100%信頼すること、言い換えれば、施工業者へ依存することが前提であるために、発注には次のようなリスクが考えられます。
①工事価格に競争原理が働かないこと
②施工会社の工事品質をチェックする機能がないこと
理事会として組合員(居住者)へ「なぜその施工会社へ○○万円で発注するのか」の根拠説明が難しく、現代では管理組合での合意が得られにくい、または多数決で可決承認されても住民間でモヤモヤ感の残りやすい発注方式と言えます。
[設計監理方式]
マンション管理組合と施工会社の間に、設計監理者(設計事務所・一級建築士事務所・NPO法人・管理会社の設計監理部門)を入れて、技術支援を受ける方式です。
管理組合が選定した設計監理者が、建物の劣化調査(人間ドックのようなものですね)に入り、その結果をもって修繕工事のプランを作り(修繕設計と言います)、出来上がったプラン(発注仕様)に基づき複数の施工業者から見積を取り、価格と品質に優れる施工業者を選定する。
そして施工業者による工事期間中は工事チェックに入る、、、といった、大規模修繕工事にあたり管理組合が本来やらなければならないことを、設計監理者が行ってくれます。
設計監理方式のメリットは、
・技術者として、劣化調査や修繕設計・工事中の監理(チェック)を行ってくれる
・施工業者の選定を支援してくれる
といったところです。
設計監理者への報酬はかかりますが、施工業者の選定支援を受けて工事費が5%でも安くなれば、設計監理者への報酬(工事費の4~7%程度)を支払ってもプラスマイナスゼロですので、専門家を入れるメリットは大きい、といえます。
一方で、設計監理方式で最も大きなリスクは、
・設計監理者と施工業者による癒着(バックマージン・便益供与)があると、総工費が安くならない
という点です。
残念ながらマンション修繕業界では、設計監理者と施工業者とのつながりが強く、Aという設計監理者を使えばFかGかHという施工業者が、Bという設計監理者を選定すればCかDかEという施工業者が選定される、といった実質談合状態になる可能性が非常に高いと言えます。
設計監理者の見積は、そのほとんどが人件費と技術料で成り立っています。マンションの規模によってかかる作業量はおのずと決まってきます。
見積が安い設計監理者は、どこかで穴埋めしなければ会社が存続できません。
そこで安く設計監理を請けても利益を穴埋めできるように、施工業者とのつながりが生まれるのです。
つまり、施工業者から工事費の5%でももらえれば、設計監理料が安くても十分採算があうのです。
中には施工業者から10~20%ものマージンをもらう設計監理者があります。
その、マージンとなって流れる分を、施工業者はどこで穴埋めするのでしょうか。そうです。工事費の見積を高くすることで穴埋めするのです。
つまり、管理組合が貯めてきた修繕積立金が、必要以上に多く支払われることによって、設計監理者も施工業者も商売が成立っている、
という点があるのです。
設計監理者は技術者であり、その技術を買っているだけに、結果的に高い修繕総工費になるリスクをどう防ぐか?
またはクリーンな設計監理者を探すことができるか、がポイントになります。
[修繕コンサルタント(セカンドオピニオン)方式]
マンション管理組合の立場にたった修繕コンサルタント(セカンドオピニオン)を、施工業者や設計監理者とは別に採用する方式です。
上述の「設計監理者と施工業者との癒着」を防ぐために、管理組合の側に立ったコンサルタントを入れる、という発想です。
また設計監理者の多くが、住民間の合意形成に対する支援を行っていないか、苦手な領域であるため、合意形成の支援も受けることが出来ます。
・理事会や修繕委員会に出席しての助言
・設計監理者への質問や指摘・指示
・そもそも設計監理者の選定コンサル
・施工業者選定時における癒着の防止
・理事会や総会での説明代行
など、設計監理者ではできないフォローを行うのが修繕コンサルタント方式のメリットといえます。
(終わり)
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以上「談合は日本の必要悪だ!の声に負けんぞ~の」深山州でした!