2015.4.23~メルマガ第80号~
【今号のお題:マンション大規模修繕を成功に導く9か条 その6】
大規模修繕工事の品質を維持しながらコストダウンを図る方法とは?
◆大規模修繕工事とマンション管理会社との関係とは?
ほとんどの管理組合に日常の運営パートナーとして採用されているマンション管理会社。
最近では日常の管理業務にとどまらず、大規模修繕工事においても何かしらの業務を提案してきます。
単に施工業者を紹介する会社もあれば、他の設計監理者と同じように技術支援するか、自ら施工部門を持ち、施工会社として提案する管理会社もあるでしょう。
ところで、大規模修繕工事において、管理会社とはどのような付き合い方が最適と言えるでしょうか?
○マンション管理会社の本来実施すべき業務とは
管理会社の本来実施すべき業務は「管理組合における日常の保守・管理業務」であり、
主には
・理事会や総会の支援(アドバイスや理事会総会資料の作成など)
・会計出納(管理費等の取り扱いや会計資料の作成)
・現場スタッフの派遣(管理員や清掃員など)
・各種設備の保守点検や清掃・植栽
・緊急対応(機械監視やコールセンター)
そして
・日常発生する小修繕(営繕)工事の支援
です。これらの日常業務を通じて管理組合の運営を支援することが第一の業務であり、
これら管理業務を遂行するために管理組合との間で管理委託契約を締結し、
毎月定額の委託料を受け取ってビジネスを成り立たせています。
従って、大規模修繕工事の施工や設計監理といった業務は日常の業務とは言えず、
管理委託契約の範囲外(別契約が必要)となります。
○施工会社としての管理会社
大手管理会社の一部では、自ら施工部門を持ち、「一施工業者として」の工事提案をします。
管理組合から見れば、管理会社は日常における保守・点検等を委託する先ですが、日頃から関係が継続しているだけに、大規模修繕工事について何かしらの提案を受ければ、話を受けるのは自然の流れと思います。
しかし、管理会社は大規模修繕工事においては真のパートナーとは言えない側面があります。
そこに金銭的な利害が発生するからです。
例えば、管理会社は社内に工事の作業を行う作業員(職人)を抱えていません。
現場代理人すらも持たない管理会社がほとんどです。
つまり工事はまるごと施工業者を下請け企業として一括再発注となります。
管理会社は営業マン以外は下請けの工事を誰も見に来ない、ということも多いのです。
中には管理会社の名刺を持った修繕工事の担当者が実は下請けの施工業者の社員、なんていうことはよくあるのです。
その結果、管理会社は施工業者の調整程度の仕事で、修繕工事費の5~20%を「抜く」ことになります。
この中間マージンのおかげで、管理組合は知らずのうちに割高な工事費を支払っていることになるのです。
例えば修繕専門の施工業者を直接選定し発注すれば5,000万円でできる工事が、管理会社へ発注することで6,000万円強に膨れ上がる可能性があるのです。
例えば10,000世帯=200管理組合(一マンション当たり50世帯として)を受託する中堅規模の管理会社であっても、そのうちの10~20管理組合が毎年1~3回目の大規模修繕工事を迎える計算になります。
全部の管理組合から工事を受注できないにしても、これだけの数の修繕工事を手がけるには作業員や現場代理人を多く抱える必要がありますが、管理会社がこれだけのスタッフを抱えることはなく、外注に出すことになるのは自明です。
また、施工業者にとっては個別の管理組合へ営業するよりも大手・中堅の管理会社と日頃から関係を深めておき、紹介料を払って修繕工事を安定受注するほうが効率的です。
なので、管理会社へ大規模修繕工事を発注する、ということは、ほぼ自動的に施工業者(下請け)へ丸投げとなり、中間マージンが必然的に発生するものなのです。
また、管理会社からの工事提案をそのまま受け入れると、いわゆる「責任施工方式」が採用されますが、工事の品質をチェックする立場の人がいない(完全に下請けの施工業者へ丸投げとなりチェックされないか、チェック役がいたとしてもあくまで管理会社内の自主チェックとなる)ため、工事の品質確保を管理会社に依存しなければならないのもリスクです。
管理会社の口説き文句は
「我々は日常管理業務を行っているから、逃げることができません。だからご安心下さい」
ですが、そのために品質の良し悪しのわからない工事を5~20%も高く払う必要はない!と、思うのですがいかがでしょうか?
管理会社へ大規模修繕工事の施工を発注するのは、これらのリスクを承知したうえで、それでも信頼関係があり、最良と判断できた場合と考えます。
○設計監理者としての管理会社
では、管理会社に設計監理(技術支援のコンサルタント)を依頼するのはどうでしょうか?
最近ではマンション管理組合の目が厳しくなってきたためか、施工としての受注をあきらめ、設計監理の立場で大規模修繕工事に携わろうとする管理会社が大手~中堅を中心に増えました。
しかしここにも問題があります。
まず上記の「施工会社としての管理会社」で書いたのと同じように、管理受託するマンション数に見合っただけの設計・監理スタッフを抱えている管理会社はほとんどありません。
結局、設計も管理も外注に出すところが多く、設計監理料そのものにマージンがかかってしまうのです。
一方、管理会社の設計監理見積がかなり安い場合がありますが、結局のところ施工会社との癒着によって利益を確保することになります。
例えば、管理会社が設計監理者として管理会社に代わり施工業者の選定支援を行う場合、あらかじめ付き合いのある施工業者を数社見積に参加させ、特定の施工業者へ発注させるように管理組合を誘導することで、施工業者からリベート(バックマージン)を受け取ることが常態化されています。
そのバックマージンの相場が修繕工事費価格の5~20%相当であるため、結局管理会社へ施工をお願いするのと同じだけ工事費が高くなるのです。
結局、管理組合が自分達が貯めてきた修繕積立金を大切に使いたいなら、管理会社へは大規模修繕工事の設計監理を発注するのもリスクが付きまとう、というのが当社の考え方です。
○大規模修繕工事における管理会社との最適な付き合い方
大規模修繕工事において、管理会社へは施工も設計監理も任せられないとなると、管理会社へは何をお願いできるでしょうか?
一番は「フロント担当者」による、日常管理業務の延長にある支援をお願いする。
そして「管理員」による、理事会や修繕専門委員会と居住者・施工業者(現場代理人)・設計監理者との橋渡し役をお願いするのが一番です。
つまり、管理会社には大規模修繕工事の肝の部分ではなく、毎月支払っている管理費の範囲内で周辺業務に特化してもらうのが最善の活用方法、と言うのが当社の結論です。
(終わり)
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以上「NHKの生放送で実は大緊張していた」深山州でした!