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マンション管理組合の第三者管理について(日本経済新聞記事を転載)

日本経済新聞 平成23年12月19日朝刊より転載…

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分譲マンションの管理を巡るトラブルが後を絶たない。

管理会社の社員によるマンション管理組合の財産詐取といった事件に加え、居住者の高
齢化などで機能しない組合が増えていることで、管理会社との関係をはじめとした問題が起きるリスクが高まっている。

施行から10年たつマンション管理適正
化法などを見直し、組合が「第三者」に管理を任せる場合の新たなルールを確立する必要が増している。

管理会社と組合の関係づくりが重要性を増している。

【預金詐取容疑で逮捕】

11月2日、東証1部上場の不動産会社である太平洋興発の元契約社員が詐欺容疑で逮捕された。同社が業務委託を受けたマンション管理組合の
預金口座から現金をだまし取った容疑。

2010年4~10月に東京都内のマンション管理組合の理事長に「組合の別口座を作る必要がある」と嘘をつき、新設
した口座に組合の預金を移させ詐取した疑いなどがあるという。

マンションの所有者から集めた管理費や修繕積立金など管理組合の財産が損なわれた典型的なトラブルだ。

こうした問題の防止策として国土交通
省はマンション管理適正化法施行規則を一部改正。マンション管理業者に、管理組合財産の分別管理方法を厳しく義務付けるなどの措置を10年5月に施行し
た。

マンション管理会社の業界団体、高層住宅管理業協会(東京・港)も「管理組合財産の毀損事故防止のためのコンプライアンス(法令順守)・プ
ログラム」などを整備。

11年度中にそれらの項目ごとに評価基準を策定し、12年度から加盟各社の取り組み状況を確認する計画で、官民で対策を強化してい
る。

それでも、管理組合と管理会社の業務委託などを巡って問題が相次ぐのはなぜか。

【当事者能力欠く】

マンションの日常の清掃や保守、修繕計画の策定などは、各戸の所有者でつくる管理組合の総会の決定に基づき、理事会が主導し実行するのが一
般的。具体的な業務は管理会社に委託するのが大半だ。

業者のコンプライアンスが不十分な事例もあるが、それ以上に深刻なのは組合の当事者能力が欠けているケースだろう。

例えば、居住者には管理費や修繕積立金を長期滞納する人もいる。

出納業務を管理会社が引き受けているマンションでは業者が督促するものの、
滞納者が無視すれば回収まではしない取り決めの場合が多い。組合財産が減り、修繕工事も難しくなるため、管理組合が事態収拾に乗り出さざるを得ない。

だが、都内のマンションの理事長として管理費の長期滞納者への対応を迫られた60代の男性は「素人ではどう対応すればいいか知恵も限られる」と打ち明ける。

そもそもマンション管理適正化法は、各戸の所有者や管理組合に「自分たちの財産を自分たちで守る」ため、役割や努力義務を規定している。

それを果たしやすくするため、組合運営の助言者である「マンション管理士」を創設するなどして支援するのが本来の趣旨だった。

しかし、管理組合が機能を発揮しなければ同法の目的は果たせない。

既存のマンション戸数は10年末で570万戸を超え大幅に増えている。


ともと管理組合への関心が低い居住者が多い上に、所有者の高齢化、投資用ワンルームマンションなど所有者が住まない物件の増加、理事長など役員のなり手が
少ないなど問題は山積だ。

現行制度でもマンションの所有者ではない第三者が区分所有法25条で定める「管理者」となることはできる。

その引き受け手として、管理会社
や、マンション管理士ら専門家を想定していたとみられる。

しかし、国交省の「08年度マンション総合調査」によると、所有者以外が管理者になっているマン
ションは5%余りにすぎない。

第三者管理の利用が進まない要因としてある管理会社の担当者は、「管理委託契約には利益相反の懸念が残り、積極的には引き受けにくい」とい
う。

修繕などを外部発注する場合、管理者の立場としては、組合の意向に沿って安価で良質なサービスを提供してくれる業者を選ぶことが求められる。

ところが
管理会社の立場では、高い価格で自社が受注したいと考えるため、双方の利益が反してしまう。

不動産関連法に詳しい吉田修平弁護士は第三者管理について、「マンションを管理するのに、組合の意思決定と実際の業務執行という権限を誰が
どの程度担うかはっきりさせ、組合の実態に合わせてガバナンス(統治)が働くようにする必要がある」と指摘する。

同時に、運営に携わる人が仕事に応じた報
酬を受け取れるようにするといった誘因を設計し、「管理組合の自助努力を促す仕組みも欠かせないだろう」という。

【行政の関与どこまで】

こうした声を受け、国交省は来年1月にもマンションの管理ルールに関する検討会を立ち上げる。

「第三者管理者」の要件、その業務範囲や権限
などについて議論し、来夏までにマンション管理適正化法の見直しの方向を打ち出す。

ただ、国交省は「私有財産の管理に、どこまで行政が関与するか難しい問
題をはらむ」(不動産業指導室の木村実室長)という。

不動産会社にとって販売した物件の管理事業は重みを増している。新規発売戸数がピークの半分以下に縮小した現在の市場環境ゆえだ。

マンショ
ン関連コンサルティングを手がけるトータルブレイン(東京・港)の久光龍彦社長は「物件の供給と管理はフローとストックの関係で、マンション事業を前進さ
せる車の両輪」と例える。

管理会社間で価格やサービスをめぐる競争も激しくなっている。

管理業務の発注元である組合の運営状況が不動産会社の経営に与える影響は大きい。

東日本大震災後、近隣住民との交流を深めたいという消費者
の需要が高まり、自社グループの管理会社を通じてコミュニティーづくりを支援する取り組みを強調した営業手法が増えた。

管理組合を機能させる試みは、単に
私有財産の保全だけにとどまらない広がりを持つ。

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