2015.2.12~メルマガ第75号~
【今号のお題:マンション大規模修繕を成功に導く9か条 その2】
大規模修繕工事のプレーヤーとは?④
「設計監理者」
一昔前のマンション大規模修繕工事においては、管理組合は修繕工事を直接施工会社へ発注する「責任施工方式」を採用することが一般的でした。 しかし、この責任施工方式には、工事費が高くなるリスク(お金をチェックする機能がない)と、工事品質が確保されないリスク(作業や工程をチェックする機能もない)があるため、現在の発注方式においては少数派です。
この、管理組合と施工会社との間に入り、上述の「工事費・工事品質」といった技術面で管理組合を支援するプレーヤーとして「設計監理者」の存在があります。
設計監理者は業界経験者でないとなかなかピンとこないと思いますが、一般的には
「設計事務所」
「一級建築士事務所」
「修繕専門のNPO法人」
そして
「管理会社の中の工事部門」
が設計監理者として該当します。
この設計監理者は、修繕技術をもって管理組合の支援を行うことを事業としており、具体的な業務としては、
・建物/設備の劣化診断(調査)
・診断調査の結果に基づいた修繕設計(工事プランの作成)
・修繕設計に基づいた施工業者の選定支援
・修繕工事期間中の工事監理(施工業者のチェック)
(施工会社(ゼネコン)から派遣される現場代理人の監理・全体のチェック役)
・工事完成(竣工)後の施工業者におけるアフターサービスの立会い
があります。
一般的に設計監理者は、管理会社内部の工事部門を除き、企業規模は非常に小さく、一級建築士が一人で個人事務所として経営しているところも多いです。スタッフが10名もいれば、設計監理業界では中堅になります。
なお、マンションの修繕工事に特化した設計監理者は、マンションの数と永住思考の広がりに比例してビジネスチャンスは拡大しており、競合する企業の数も増えています。
また、日本の高度成長が終わり、新築物件が減ってくると共に、新築組の設計事務所が修繕工事に参入してくるケースも見られますが、「クライアントが合意形成を要し、専門知識のないマンション管理組合であること」「人が生活しながらの改修工事の監理をしなければならないこと」が、彼らにとって意外と大きな参入障壁だったりします。
[修繕コンサルタント(セカンドオピニオン)]
上述の設計監理者(設計事務所や一級建築士事務所、NPOなど)を、管理組合の方(皆さん)は総称して「コンサルタント」と呼ぶことが多いのですが、マンション管理や修繕の業界では、設計監理者はあくまで設計監理者であり、コンサルタントではないようです。
確かに、設計監理者はあくまで「設計や監理の技術者集団」といった雰囲気の方が多く、クライアントである管理組合の合意形成や方向付けに関して助言したり道を示す「コンサルタント的な要素」を出す設計監理者を、ほとんど見たことがありません。
また、とても残念なことに、施工業者(ゼネコン)と設計監理者の多くが、バックマージン(リベート)や便益供与など、管理組合の見えないところで癒着する構造が蔓延し、設計監理者が管理組合の側に断ち切れていないことも、彼らがコンサルタントではない所以でしょう。(これは大変根深い問題です。)
さて、これまで、マンション大規模修繕工事の世界では、クライアント(発注者)であるマンション管理組合の他に、施工側としての施工業者(ゼネコン)、設計・監理としての設計監理者しかいませんでいた。
一方で、最近では、設計監理者ではない「管理組合の修繕コンサルタント」「専門委員会のセカンドオピニオン」としての存在が少しずつ注目されています。
修繕コンサルタントの仕事の最もわかりやすいものは、設計監理者の選定支援です。信頼できる技術者を管理組合がどのように探し、どのような観点で選定すれば良いのか、といった問題を解決するために、修繕コンサルタントを採用します。
また実際に設計監理者が選定された後も、理事会(専門委員会)内部の合意形成や住民へのプロセス開示など、修繕技術以外の支援となると、設計監理者の担当者は不得手な部分です。
さらに、設計監理者による施工業者(ゼネコン)の選定を支援する際、その選定プロセスをチェックする役目も、修繕コンサルタントの重要な仕事になってきます。
上述のように、設計監理者と施工業者との癒着が蔓延しているこの業界では、業界慣習から管理組合が身を(お金)を守るために、コンサルタントによる監視(抑止)は大きな意味があります。
場合によっては設計監理者から施工業者の選定業務を取り上げて、修繕コンサルタントと理事会(専門委員会)とで徹底的な透明性と公平性を確保した形の施工業者選定を行うこともあります。
このように、修繕業界について知識経験のないマンション管理組合が、自己の利益を守るためのひとつの手段として、修繕コンサルタントの果たす役割は大きいですし、これからますます大きくなるでしょう。実際に大規模マンションを中心に当社のコンサルタント業務への引き合いは増えています。
なお、コンサルタントの業務は幅広く、また実際の立場についても、
・理事会や専門委員会に出席して助言するアドバイザー
・修繕工事の計画段階から工事完成(竣工)期間までを通じての技術顧問
・大規模修繕工事そのものの責任者(修繕工事に限定した理事長代行)
・マンション管理士的なファシリテーター(理事会や修繕委員会内部、理事会と組合員(居住者)との橋渡し的な意見調整役)
など、活用シーンはマンション管理組合の実情に応じて様々です。
(終わり)
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以上「修繕業界の古く悪しき慣習にNO!を突きつけたい」深山州でした!