2013.4.16~メルマガ第32号~
【今回のお題:管理費を下げたい その前に(管理組合の合意形成で必要なこと)3】
前回コラムでは、
・マンション管理組合で物事を円滑に進めるには「合意形成」が最重要である
・時には「強引形成」が必要なこともあるが、ほとんどの場合はソフトな合意形成を
目指すことが望ましい
と書きました。
○マンション管理組合における合意形成のスタートは
「何が問題で」「どうすべきなのか」のストーリー作り
あなたが管理組合の理事長だとして、
マンションの住み心地と不動産価値を維持・向上させるために
理事会で話し合って、次のような活動を起こしたい、とします。
・サービス品質を維持しながら管理費を削減したい
この、「何をしたいのか」は、よほどあなたや理事会に欲望や自己顕示欲が
入っていなければ問題になることはありません。
問題は、
「なぜそれをしたいのか」「しなければならないのか」の
説明が足りず、いきなり「こうしたい」「こうすべき」と一方的な説明を
される方が非常に多いことです。
特に日本人はディベート(議論)よりも根回しの文化が定着しているため、
いきなり「こうしたい」「こうすべき」という説明では
多種多様な組合員が同居する管理組合では通用しないのです。
『自分はどうも論理的な説明が苦手だ』
『うまく説明することができない』
『要点を整理できなくて困っている』
とお悩みの理事長には、この部分がクリアできないと
想いだけが先走ってしまい、なかなか先に進めず
ストレスが溜まるかもしれません。
○ストーリー作りに必要な要素は、
「論理的な説明」と「感情への訴え」
1)「論理的な説明」は「企画書」が参考になる
ずいぶん前に経営コンサルタントの大前研一のコラムで
『企画書はA41枚でまとめる』
というのを読んで共感し、これを超簡単に応用して
管理組合がアクションを起こすときの論点整理のために
使うようおススメしています。
例えば、冒頭の
・サービス品質を維持しながら管理費を削減したい
という要望にこの企画書を当てはめると、
例えば次のように整理ができます。
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1.What(目的はなにか?)
例)管理費の削減
2.Why(それはなぜか?…背景)
例)各組合員から徴収している修繕積立金がこのままでは
不足になるため、現在の支出を見直しして節約を図り、
不足する修繕積立金へ充当したい。
3.Where(プランの対象範囲はどこか?)
例)管理費会計における各支出項目
・管理委託料・共用部の電気料・インターネット使用料
保険料など
4.Reference(参考例。数字が入ると具体的でなお良い)
例)過去に実施した小修繕工事について、管理会社が提示した見積り
に対して相見積を取得すると概ね○○%下がっている
例)近隣の○○マンションでは管理会社と交渉して○○%減額している
例)企業が生き残るためには売上げを上げるか支出を下げるしかなく
コスト削減は当然の方策である。
マンション管理組合は営利企業ではないが、
収入は各組合員からの徴収や駐車場使用料など限定的であり、
支出は経年劣化と共に増加傾向にあり、コスト削減は自然な
行動である。
5.How to do(実行の具体的方法と目標は?)
例)はじめに現在の管理会社へ管理委託料の減額交渉をお願いする
あわせて同社へ電気料などの経費支出削減提案を出してもらう
例)現在の管理会社を含め複数の管理会社から相見積もりを取得する
6.Who(実行者、受益者は誰か?)
例)実行者:理事会・専門委員会・オブザーバーも参加可能
例)直接的な受益者は管理組合(管理費会計のコスト削減は組合の利益)
間接的な受益者は各組合員(コスト削減分を修繕積立金へ充当すれば
将来の値上げを軽減できるため)
7.When(実行スケジュールは?)
例)平成○○年○月:現管理会社と協議(○ヶ月)
平成○○年○月:他の管理会社から相見積もり取得(○ヶ月)
平成○○年○月:総会で改めて改善案の提示
・
・
・
8.How Much(実行の予算は?)
例)理事会だけで実行する場合は不要
9.Which(目標達成の方法は複数あるのか?)
例)コンサルタントを採用し全般の見直しを依頼する
費用は○○○円かかる。メリットは、、、デメリットは、、、
10.Risk – Hedge(リスク可能性と対応)
例)現管理会社が減額に応じてもらえない可能性がある
または想定よりも減額が少ない可能性がある
例)減額してもらえた場合、サービスレベルの低下につながる可能性がある
それを見極めることは難しい
例)この場合は9.で記載の通りコンサルタントへ相談する方法が
考えられる
11.まとめ
例)昨今の不景気で各組合員の収入の大幅増が望めない中、
サービス品質を維持しながらコストを下げることは
全組合員にとって利益になることであり、是非実施したい
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この1.から11.までの各項目に、簡単に内容を書き込んでいくと、
「なぜそれをしたいのか」「しなければならないのか」が論理的に
整理できるようになります。
当社が顧問先マンションで作成の支援をする、
・総会の議案書
・広報紙
・アンケートのあいさつ文など
の各種広報については、多少順番は入れ替えますが、
概ね上記に当てはめて組み立てるようにしています。
もし上記の一つひとつにしっくりくるような簡潔な回答を入れられない時は、
あなたの頭の中でも整理できていない(漠然とした希望レベル)可能性が
あります。
このままマンション住民へ訴えると質問や反論に答えることが
できなくなり、企画倒れに終わる可能性が高くなってしまいます。
特に
10.のRisk – Hedge(リスク可能性と対応)
は、きっちりと押さえておきましょう。
日本人は全般的に保守的で、「万が一」を想像しやすいものです。
そこまできっちり押さえて対案まで検討していると、
多くの方は安心してくれます。
まずは
「なぜそれをしたいのか」「しなければならないのか」を論理的に
整理しておきましょう。
2)論理説明+「感情への訴え」も必要
上記のように論理的な説明ができるようにしておくことは、
MUSTですが、これだけではマンション住民の「合意」と
得ることができないときがあります。
政治家の選挙運動など見ていると良くわかりますが、
マニフェストに論理性があっても、最後は
「ぜひやらせて頂きたい!」「みんなの利益のために!」
という熱いメッセージが多くの支持者を得ている要因でも
あります。
特に多くの住民が集まる総会や住民説明会の場では
熱を込めて話しかけることが重要です。
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次回以降のメルマガでは、合意形成を促進するために
33号 当たり前の「何をするか」と、意外な「誰が言うか」
34号 広報は手紙を恋人へ出すように
35号 アンケートにもルールがある
36号 先輩への気配りを忘れずに
37号 総会の出欠票は「取りにいくもの」
38号 議案の中身も説明者次第
について書いていきます。
★論点整理から合意形成を支援して欲しい!
★いますぐ合意形成をはかり問題解決しなければならない!
★隔週のメルマガは待ってい