分譲マンションの区分所有者にとって、ただでさえ馴染みがなく、興味・関心を持ちにくい「マンション管理組合の運営」。
その中でも「修繕工事」については、建物や設備に関する専門知識や経験がないと、さっぱりわからない区分所有者がほとんどではないでしょうか?
しかし、管理組合の運営や修繕工事に関する興味・関心が低く、修繕工事に関する知識・経験がない方でも、
「毎月支払っている管理費(修繕積立金)の値上げはして欲しくない」
という想いは同じではないでしょうか?
「管理会社は、自分が収め、管理組合で貯めている修繕積立金を大切に守ってくれている」と思っていませんか?
残念ながら、管理会社の多くは、修繕工事を大きなビジネス機会と捉え、少しでも多くの修繕工事で会社に利益をもたらそうと考えています。
大切な修繕積立金を少しでも節約し、無駄遣いを減らしたい管理組合と、その修繕積立金で儲けるために「不要・不急な修繕工事」を提案しようとする管理会社。
そして、修繕について専門的知識や経験がなく「誰かに頼りたい」理事会と、知識・経験だけでなく管理組合のお財布事情まで熟知する管理会社。
建物は年数とともに少しずつ劣化してゆきますので、いつか誰かに修繕工事をお願いしなければなりません。その発注先が管理会社であっても良いのです。
でも、管理会社が素人集団である管理組合を騙して、「不要・不急な工事提案」「割高な修繕見積」を提案していたら、頭に来ませんか?
現実的には、この「不要・不急な工事提案」「割高な修繕見積」を迫る管理会社が非常に多いです。
また、施工業者からリベートをもらう(その分、施工業者から提示される見積が高くなる)ことも、この業界では横行しています。
どんなに優れた専門知識や経験も、自己の利益のためだけに使っては、管理組合のためにならないどころか、毒にしかなりません。
管理組合(理事会)が、修繕工事の検討を始めるタイミングはどこですか?
一つは、緊急時。例えば震災で建物が破損した、とか、突然にポンプが止まって水が出なくなった、など。
この場合は「修繕しなければならない事実」がはっきりしていて、しかも待ったなしですから、急いで検討し実施する必要があります。
もう一つは「管理会社から『そろそろ修繕工事の時期です』と提案があったとき」
そしてこの提案の拠り所は『自主点検検の結果報告』と『長期修繕計画』です。
管理会社の多くが、管理組合からもらっている委託費の中で、定期的に建物の点検を行っています。これは法的なものでなく、自主点検です。
その自主点検の報告書は、当然管理会社が作ります。この報告を元に、修繕工事の提案が理事会になされます。
私たちが問題視するのは、管理会社の技術者が行う点検の『技術』よりも、『点検結果の管理組合への伝え方』です。
例えば、屋上を点検したら、比較的軽い劣化が数箇所あった場合で、部分補修をしたり経過観察をすれば十分なケースでも、管理会社が「不要・不急の工事」を提案したいと思えば、写真のとり方や文章の書きっぷりによって「そろそろ全体をリニューアルする時期です。大規模修繕工事を検討しませんか?」とまとめることができるのです。
実際に、管理組合から当社に「管理会社から大規模修繕工事の提案がでてきたのだけど、このタイミングで検討するべきですか?」と持ち込まれる相談のほとんどが、実際に現地を見てみると「全然急がなくてOK」だったり「一部を部分補修すれば大規模修繕工事はまだまだ先延ばしできる」という回答になります。
また、管理会社が自社で作成している「長期修繕計画」を根拠に提案してくる修繕工事や、工事のための予算確保も、眉唾ものです。
そもそも長期修繕計画とは、下にあるとおり「計画通りの時期に、計画通りの金額で実施するためのプランではない」のです。
それにもかかわらず、管理会社は、通常総会を控えたタイミングで、任期終了が迫っている理事会に対し「長期修繕計画に『来年は◯◯工事』と予定されていますから、予算案に計上しておきましょう」と提案し、理事会もこれを受け入れて、総会の予算案にサラッと盛り込みます。
そして、新しい理事会役員は管理会社から『前期からの引継ぎで、長期修繕計画に予定されている◯◯工事を検討しましょう。予算が取れています』と提案されると、まぁそんなものか、と受け入れてしまう。
こうやって管理会社からの修繕工事提案がすんなり採用されてしまいます。
これらのように、結局のところ『不要・不急・割高な』修繕工事は、管理会社がきっかけとなって持ち込まれるのです。
管理会社のすべてに対し不信感を持つことはあってはなりませんが、修繕工事に関しては「毎月支払っている修繕積立金を有効に使い、賢く残したい・値上げしたくない」のでしたら、『お金を持っている素人集団の管理組合』と『お金を稼ぎたいプロ集団の管理会社』とでは利害が合わないことを理解し、情報格差を放置することはリスクなのだ、と考え直し、対策を打ちましょう。
当社がマンション管理士の事務所として、掛かり付けの医者的なサービスとして提案する「長期修繕カウンセラーサービス」があり、その中に「予算化点検」という仕組みがあります。
予算化点検とは、管理会社から持ち込まれる建物点検報告や長期修繕計画を根拠とした『不要・不急・割高』な修繕工事提案に対して冷静な判断ができるように、管理組合の側に100%立つマンション管理士事務所が総会の前に点検を行い、予算案もチェックを入れる仕組みです。
修繕工事を請け負って売上を上げるか、施工業者を紹介する見返りとして業者から受け取るリベート(バックマージン)を目的とする管理会社は、とにかく「実際の劣化度合いよりも、自分たちで作った長期修繕計画通りに」修繕工事を提案したがります。
当社は、お金を支払う管理組合の目線で「本当にいま、修繕する必要があるか」を検討し、無駄・性急な工事を控える仕組みを提案しています。それが「予算化点検」です。修繕積立金の無駄遣いを防ぎ、将来の資金を貯め、修繕積立金の過度な値上げを防ぐことができます。
また、管理会社に対する牽制機能を働かせる効果もあります。
もし、マンション内に、建物や修繕に明るい区分所有者(建築士や施工管理技士等の技術を持った方)がいて、ボランティアで理事会を支えてくれるようでしたら、わざわざ第三差にお金を払うのはもったいないです。管理組合として上述のような「予算化点検」の対応が取れれば鬼に金棒です。やり方も難しくありませんので教えます。
とにかく、自分たちの修繕積立金の使い方について、管理会社へ過度に依存しすぎず、自分たちで守れる体制を作りましょう。