マンションの管理組合運営において、「専有部分のリフォーム」は意外と見落とされがちですが、住民トラブルや資産価値の低下にもつながりかねない重要なテーマです。
今日は、実際にご相談いただいた事例をもとに、リフォームに関するルール整備や、継続的な体制づくりのポイントについてお話しします。
住民トラブルを防ぎ、安心して暮らせるマンションにするために。築30年以上が経過した大規模マンションの管理組合様から、「専有部分(各住戸の室内)のリフォームに関するルールをきちんと整えたい」とのご相談をいただきました。
こちらの管理組合は、数年前にも修繕委員会を立ち上げて困難な配管改修に積極的に取り組むなど、近隣でも評判の活動的な管理組合です。しかし、理事の高齢化は着実に進み、継続的な活動が難しくなりつつあるそうです。そんな中、住戸内のリフォームをきっかけに発生する騒音トラブルや住民間の対立が問題となっており、明確なルールを整備しておきたいという強いご希望がありました。
まず私たちは、「全面的なリフォームを一律で禁止してしまうと、将来的に資産価値を下げてしまうおそれがある」ことをお伝えしました。特に近年の中古マンション市場では、購入希望者がリフォームを前提に物件を探すケースも増えています。そして、時代の変化を踏まえ、柔軟に対応できるルール設計の重要性をご説明しました。
一方で、何のルールもない状態ではトラブルが起きやすく、管理組合の負担が増えてしまいます。そこで、「プロによる工事を前提とした一定のルール整備は可能」であること、そしてリフォームに関するルールを「重要事項調査報告書」などを通じて購入希望者にもきちんと伝えていく工夫についてもご提案しました。
今回のご相談は単にルールを作るだけでなく、今後も管理組合として持続的に対応していける仕組みをつくる必要があると考えました。理事が毎年交代する中でも継続性を持たせるため、私たちからは以下のような体制づくりをご提案しました。
◆「専門委員会」の設置
リフォームに関する検討や運用を専門的に行う委員会をつくり、理事会とは役割を分けて負担を軽減。理事会には進捗を報告する形にすることで、無理のない運営が可能になります。
◆当社との顧問契約による継続サポート
専門的な知見を持つ私たちが継続してサポートすることで、ノウハウの引き継ぎや制度運用がスムーズに進みます。
◆委員会メンバーは固定せず、柔軟に出入りできる仕組みに
総会の承認を経て、若い世代や新しく入居された方でも参加しやすく。将来の世代交代を見据えた「開かれた委員会運営」をご提案しました。
リフォームは個人の住まいに関わるテーマですが、同時にマンション全体の住環境や資産価値にも大きく影響します。否定的なルールで縛ることなく、「住まう人の快適さと安心を守る」という本来目的をいかに上手く達成させるか。私たちメルすみごこち事務所は、そうした視点から、管理組合の皆さまと一緒に制度設計を進めてまいります。
※余談ですが、ご相談者様は、過去、当社本社のある渋谷三信ビルに勤務されていたことが雑談の中で判明しました。セルリアンタワーが立つ以前の渋谷の街の話などで予定外の盛り上がりを見せました!