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2024.06.27

新築分譲マンションの管理費・修繕積立金が値上がりしている理由

管理費と修繕積立金の基本概念

マンション管理士の武居です。

たいへん興味深いニュースを見ました。
新築分譲マンションの管理費、修繕積立金の初期設定額がここ10年で約35%ほど値上がりしているというものです。
私の肌感としては、もっと値上がりしているように感じているのですが…。

《出典》 不動産投資ニュース 「新築分譲マンションの管理費と修繕積立金は10年間で約40%の上昇」
https://www.fudosantoushi.net/news/view/006107

 

このニュースの内容の前に、誤解を生まないよう基本的なことで恐縮ですが、管理費と修繕積立金について簡単に触れておきたいと思います。
管理費と言うのは、マンションの共用部分を日常的に維持する費用で、マンションの生活費にあたります。具体的には、共用部分の照明や空調の電気料金、清掃に使う水道料金、理事会や住民の皆さんに配布する印刷物・掲示物の印刷費、中でも最も費用のウェイトが大きいのは管理会社に支払う管理委託費です。

管理委託費には、管理人さんや清掃員さんの費用、管理費や修繕積立金の徴収・会計費用、エレベーターなどの建物設備の保守点検費、緊急時の受付や初期対応費、さらには植栽剪定など外構の維持費用なども含まれています。そして管理委託費の多寡は、建物に依存しているといって良いでしょう。

保守点検費用は、建物に設置されている設備の種類や数により金額が変わります。共用の設備、集会室やラウンジなどの施設、設備があれば、それだけ費用もかかります。ただ、注目すべきは公共料金を除き、ほとんどが人件費で構成されているということです。また、建物が大きくなれば効率が良くなり単価は下がりますし、首都圏と地方都市では自ずと地方都市の方が安価になるであろうことが想像できます。

次に、修繕積立金と言うのは、将来の大型の修繕に備えて徐々に蓄えておく貯金と言う性格のお金です。簡単に言うと、よく聞かれる「大規模修繕工事」に備える費用ということです。大規模修繕工事が何かと言うことについての説明も必要かもしれませんが、今回は主題ではありませんので割愛します。ただ、留意しておきたいのは、タワーマンションでない限りマンションの規模が大きいほど工事の効率は上げやすく、㎡当たりの単価は安くなるものの、必ずしも首都圏よりも地方都市が安価になるとは言い切れません。

なぜかというと、地方都市ではマンションの件数自体が少なく、専門の施工会社も限られます。施工会社同士の競争原理は働かず、必ずしも、地方都市の方が安価に工事ができるとは言い切れません(リゾートマンションなどでは、施工会社がなく、都市圏よりも高額な工事費になるケースもあるくらいです)。こういった事情から、建物の規模や設備の状況により必要な補修費=貯めるべき修繕積立金は異なるものの、地域により差額が生じるとは言い切れない点で、管理費とは異なります。

基本的な内容をご説明したのは、そもそも管理費が値上がりすると言う事と、修繕積立金が値上がりすると言う事は、全く別の原因(物価上昇と言う意味で共通点はありますが)により値上がりしているということをはっきりしておきたかったからです。

次に、このニュースが取り上げているベースの金額について、整理をしておかなければなりません。今回提示されている金額は60㎡換算と言うことを整理しておく必要があります。どういうことかと言うと、マンションの管理費修繕積立金は、専有面積の割合に応じて負担するようになっています。つまり同じマンションであれば、1㎡あたりの負担額が同じになるようになっていると言うことです。

一方で、マンションは部屋により場所により値段も面積もそれぞれバラバラです。仮に月額10,000円の管理費だったとしても専有面積が50㎡のマンションと100㎡のマンションでは、同じ支払額でも、実際には2倍の差があると言うことです。面積を整理した上でのニュースなので、ご自分のマンションと比較するさには注意してください。

それでは、今回のニュースについて考えてみましょう。
本ニュースでは、管理費の値上がりは10年間で約34%値上がりしていると言うことです。しかしながら、よく見ると2014年から2018年までの5年間の値上がりが8%程度であるのに対して、後半の5年間では約16%値上がりしています。これは既存のマンションでも管理会社が管理委託費の値上げを契約先の管理組合に強く申し入れ始めた時期と同じです。公共料金の値上がり傾向がはっきりしてきたのもここ5年です。新築マンションの管理費も値上がりが顕著になってきているのもこういった流れに準じていることがわかります。ただし、途中2016年と2020年の2回だけ値下がりしている点も注目です。

次に修繕積立金ですが、こちらも10年間で約34%の上昇と、結果だけを見れば管理費と同じような上昇感ですが中身を見ると様相が異なります(この辺りが私が興味を持ったところです)。こちらは当初5年間で11%、2019年以降の5年間で18%の値上がりです。10年間ほぼ均等に値上がりしてきているようなイメージで、値下がりも2020年の一度だけです。

お気づきの通り、2020年と言うのはコロナ渦で分譲マンションの販売戸数が減少しているとともに、外出控えなどで販売も伸び悩んだ年なので、例外的に調整の年と考えて良いように思います。

ところで、新築分譲マンションの供給は2009年に一度10万戸を割り込み、2013年まで盛り返してピークを迎えた後、細かい増減はあるものの、毎年減少傾向は明らかです。その中でも、興味深い点があります。新築マンションに占める首都圏の販売個数の割合は、2013年には54%あったものが、2023年には41%と減ってきており、地方都市の割合は23%から35%へと高まっています(近畿圏は24%前後とほとんど変動がありません)。

ということは、管理費については安価に設定できそうな地方都市の割合が増えているということです。にもかかわらず、管理費の平均約34%も上昇しているということなので、実態としては34%以上の値上がりになっているはずで、これが私が感じた違和感の正体なのだと気づきます。場合によっては40%を超える値上がりになっていてもおかしくなく、今後もしばらくはこの値上がり傾向は続くでしょう。

 

管理費と修繕積立金の基本的な違いとは

修繕積立金の値上がりの理由について

修繕積立金はなぜ上がってきているかについて考えてみます。こちらは単純に物価の値上がりと言うことだけでは無いように思います。皆さんは最近になってマンションの修繕積立金が不足していると言うニュースを聞く頻度が上がっていませんか?最近この手のニュースは増加しています。修繕積立金はすぐに必要となる費用ではないことから、当初から計画的に値上げをしつつ貯蓄をしていくと言う設定になっていることが多く、新築時には安価な設定で販売されていることがほとんどです。

新築時のマンション販売現場においては、一般に住宅ローンを組んでマンションを購入する人が多い関係から、できるだけ月々の支払いを少なくして売りやすくするように圧力がかかります。そのため修繕積立金そのものは調整的に抑えて販売されてきたということです。

一方で、ご存知の通り、マンションの管理組合運営は、区分所有者である理事が行うわけですが、理事は管理の専門家ではなく、一般の生活者であることから修繕積立金の計画的な改定等について、どうしても疎くなります。そして誰もが嫌がる月額費用の負担増、修繕積立金の値上げについては自分が理事の時には最も避けたいイベントです。

そういうことで、どうしても計画的な値上げを先送りする傾向があり、値上げが遅れることにより修繕積立金が不足してしまいます。場合によっては、積立不足を補うために、後々大幅な値上げを必要として、紛糾しているマンションの相談も後を立ちません(この件についてもいつか別のコラムを書きたいと思います)。

このような背景から、政府も修繕積立金について、長い間の検討の結果、本年6月「修繕積立金に関するガイドライン」を改訂しました。

《出典》 国土交通省 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf

 

今回の改訂では、修繕積立金の設定時の下限と値上げ時の上限幅などについて定められています。物価の値上がりにより、将来必要となる工事費が上がったため、月々の修繕積立金を増やさなければならないという事情以上に、こういった社会の動向を先取りした結果、値上がりしてきたのではないかと私は考えています。

なぜなら、以前の新築マンションにおける修繕積立金の計画は、3年ごとに20%以上の値上げや一時金の徴収など、現実的に「こんな改定できるのか?」と驚くような計画になっているものも少なくありませんでした。これで、やっと正しい方向に向かっていると思いたいですね。

いずれにしろ、建築工事費の上昇も激しいと聞いており、これらの負担増に加え、金利も上昇局面に入りました。マンションに限らず住宅の購入を考える方々にはハードルが上がってきているのは間違いありません。

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