近年、分譲マンションにおける孤独死は増加傾向にあり、管理組合にとって避けて通れない課題となっています。発生時には異臭や害虫、相続人との調整、特殊清掃の手配など、多岐にわたる対応が必要となり、理事長や役員に大きな負担がのしかかります。
今回は、当社が管理者として対応した実際の事例をもとに、管理組合が直面する現実と、専門性を持つ「プロ理事長」の役割を整理します。
ある住戸で居住者が亡くなられているのが発見されました。
隣室住民からの異臭通報を受けて警察・消防が駆けつけ、現場検証が実施。その後、住民から「臭気が強まりハエも発生しているので、早急に対応してほしい」との要望が寄せられました。
連絡先に登録されていたご遺族(姉)は遠方にお住まいで、現地対応ができないうえに相続放棄を表明。結果として、管理組合が主体的に対応せざるを得ない状況となりました。
異臭拡散防止のための目張りだけでは限界があり、特殊清掃が必要になりました。しかし室内に入るには鍵が不可欠です。
警察からの鍵の受領
ご遺族の承諾を得たうえで、管理者である当社が警察署を通じて鍵を受け取りました。
特殊清掃の手配
清掃業者を迅速に手配するとともに、清掃作業に必要な電気と水道を開通(短期契約を締結)しました。 清掃の際には施工前後の写真・動画を残し、領収書や契約書を理事会決議とともに保存し、将来の費用回収に備えました。
👉 ここで重要なのは、立替費用の発生や証拠保全の徹底です。相続人が不明確なまま、当社が進めざるを得ない場合、これらの準備が後のトラブル回避に直結します。
後日、ご遺族を通じて故人の息子さんから「相続の是非を判断するため室内に入りたい」との申し出がありました。
しかし、相続関係が未確定の状態で鍵を渡すことは法的リスクを伴います。そこで当社は弁護士と連携し、本人確認書類の確認に加え、以下を盛り込んだ覚書を取り交わしました。
この覚書のおかげで、管理組合のリスクを最小限に抑えつつ、鍵と本来相続人が担うべき役割をバトンタッチすることができました。
今回の事案は、当社が管理者を務める自主管理物件(管理会社に管理業務を委託していないマンション)で発生しました。しかし、管理会社に日常管理を委託しているマンションであっても、孤独死への対応は標準的な管理委託契約に含まれていないことが多く、結局は管理組合(理事会)がその都度判断と対応を迫られるのが実情です。
孤独死は決して珍しい出来事ではなく、今後ますます増えることが想定されます。だからこそ、対応マニュアルや覚書のひな型をあらかじめ整備し、弁護士や専門業者と連携できる体制を整えておくことが不可欠です。
とはいえ、体制を整えていても、実際に事案が発生すれば、各所への連絡、現場確認や立ち会いなど、早急な対応が求められる実務は役員にとって大きな重荷となります。今回の管理組合では、孤独死とほぼ同時に大規模な漏水事故(下水関連)が発生し、生活を維持しながらの応急対応に追われる状況でした。そのため、1年前に理事長を当社へバトンタッチしていた旧役員の
皆様からは、「自分たちの任期中でなくて本当に助かった」との声もいただきました。
自ら孤独死対応や大規模事故の実務に奔走している姿を想像できなくなってきている自主管理マンションの理事会役員の皆さまは、そろそろ「管理組合運営をプロに任せる」べきか、検討すべき時期に差し掛かってきているのかもしれません。