この段階までに一社に絞るか複数社に絞るかは、理事会の判断によるところですが、「一番気になる管理士に話を聞いてみて、(気にいらなければ)他も聞いてみるか考える」というぐらいのスタンスで問題ないと思います。条件も大切ですが、同じぐらいフィーリングも大切です。
管理士から説明を受ける前に『管理士活用のために居住者が支払う管理費を値上げする』ことにならないか、会計資料を確認しておいてください。管理費の値上げが必要ない=自分の懐が痛まないのであれば受け入れてもいい、という理事も少なくないはずなので、ここは重要なポイントです。また、管理士にも事前に資料を渡しておけば、改善ポイントと進め方の素案ぐらいは出せると思うので、いい腕試しになるはずです。何より、「自身が受け取る報酬の一部ないし全部の原資を自ら提案して生み出していく」気概があるかどうか確認することができます。
理事長であるあなたが提起し、賛否を問えば良いだけです。
理事会を何度も開催する手間を考えると、「管理士が説明・質疑を終え退席した後、理事会で議論してそのまま決議」するのが理想です。
決議の際にあらためて問われるのは、提案するあなた=理事長の気持ちの強さです。
当社を採用されたマンション理事長の中には、居住者からの管理費を値上げしてまで採用して下さった方もいます。当然理事や区分所有者の反対もありましたが「このままの状態では近い将来必ず管理不全に陥る。たとえコストアップになっても後々の理事会のために今改善すべき」と強引に押し切り、その後管理運営は目に見えて改善しました。大幅な支出抑制により、一時的な管理費値上げ分を余裕で取り戻すことができました。反対していた人たちも納得し、今では長いお付き合いになっています。これぐらいの強い気持ちが無ければ、ある意味「管理士は必要ない」のかもしれません。
どんなに頑張ってもあなたの思いが「伝わらない」人というのがいるものです。こういう人はほとんどの場合、そこまで関心がないか自分に負荷がかかるのが面倒なだけで、根拠を持って強く反対しているわけではありません。そんなとき有効なのが、
『この件は私(=理事長)に一任いただけないでしょうか』
の一言です。「そんなに言うのならやってみれば」という気持ちになりそうですよね?
「時間をかけて全ての理事の理解を得る」ことをあえて捨てて、「まずは管理士のサポートを受けてみて関心を持ってもらう」というふうに発想を転換してみるといいでしょう。
利用するサービスの内容やあなたのマンションの管理規約、管理組合の運営状況等によって、総会決議が必要な場合があります。
総会の議案文を作るのは、所属する組織で企画立案の経験がある方でないと難しいかもしれません。内容次第で区分所有者から得られる賛成数が変動する可能性があるので、自信のない方はマンション管理士に営業活動の一環として無償でチェックしてもらったり、作ってもらったりするとよいでしょう。
総会議案書の配布・総会出欠票の回収・集計、総会場所の設営といった業務は、管理会社に「事務管理業務」の一環として依頼することができます。にもかかわらず管理会社が拒否したり、なかなか動かなかったりする場合には、管理士に相談するといいでしょう。
総会の場にはどんな意見を持った人がやってくるかわかりません。もし強烈な反対者がいたとしても屈して決議を見送ってはいけません。ここで屈しているようでは、その先にある管理の改善など到底実現することはできません。「20%の人々は、常に何ごとに対しても反対するものだ。」というロバート・ケネディー(政治家。ジョン・F・ケネディの実弟)の言葉を胸に、ご意見は有難く受け止めつつ堂々と採決してください。そもそもはじめから反対を決め込んでいる強烈な反対者をその場で説得することは不可能です。
管理士活用に必要な毎年の総会で決議している「決算報告や予算案、来期の役員選出、管理会社との契約継続」の議案と同じ条件=出席議決件数の過半数なので、可決のハードルはそれほど高くありません。
(作成中)