コラム

マンション管理士が活躍できない理由とは(1)

(2017年6月1日更新)

せっかく国家試験に合格したのに、独立・起業が困難な「マンション管理士」

マンション管理士が合格率8%の「難関」国家資格として世の中に登場したのが2001年(平成13年)。
私が20台半ばで「管理組合のアドバイザー」という仕事を模索していた時にできた資格で、やりたい仕事に「国家資格ができるんだ!」と心躍ったのを今でも覚えています。
 
「絶対に独立してやる」という強い意思と未知の世界に飛び込むワクワク感で、、、そのあたりの話は「怪しい経歴書」に譲ります。
  
 
サイコロを振ってギリギリ最低点で合格したマンション管理士試験から16年。
私はマンション管理士事務所を立ち上げ、皆さんに助けられながら、勢いと運と「好きこそ物の上手なれ」(つまりマンション管理の仕事だけに集中してきた)でここまでやってこれました。
 
※[マンション管理士の方]管理組合の現場で『体験学習』しませんか?
 
 
国土交通省がマンション管理士制度を創設した当時の狙い、つまり
 

  • マンションが終の棲家となり、ストック(戸数)が年々増えていく(現在は630万戸)
  • マンション管理組合の数だけトラブルの増加
  • 管理組合のサポート役としての管理会社の限界(法令違反・非中立性・利益相反・能力限界)

 
これらの課題は、まったく現在にも課題として当てはまっています。

むしろマンションの増加とともに、管理組合を取り巻く当時想定できなかった新たな課題、
 

  • 人口減/超少子高齢化による想定以上の高齢化・賃貸化・理事のなり手不足
  • 不動産取得者としての外国人区分所有者の増加/総会・理事会での合意形成の変化
  • 民泊としての利用者増加に伴う組合員と宿泊者/貸出者間トラブルやセキュリティ低下
  • タワーマンション・メガマンション(超大規模マンション)の続出による新しい管理のあり方の模索
  • 東日本大震災を契機とした防災対策の検討
  • IT(SNS)が一般化し、管理組合(理事長)同士が情報交換し専門性をつけ「モノ言う組合」に

といったものがでてきて、当初は「マンション管理士は、管理組合の側に立って管理会社をチェックする役」みたいなイメージが先行していましたが、今では当社へのお問い合わせの半分が、

「管理会社はまずまずやってくれているが課題が多すぎて片付かない」
「理事会の話がまとまらない・総会でモンスタークレーマーが出て対応に困っている」
「組織としての継続性が確保できず、将来の理事会体制に不安がある」
「管理会社にいろいろと提案をお願いしているが出てこない」
「マンション管理士に理事長になって欲しい」

といった「マンションに更なる知恵・ノウハウ・経験をもたらして欲しい」と言ったものに「お客様の悩みが変質してきている」のを感じます。
 
特にマンションの数に比例して「マンション文化」が進んでいる首都圏・関西圏では顕著です。
  
いずれにしても、マンション管理士のような第三者(管理会社に対して「セカンドオピニオン」)の存在価値が益々高まってもおかしくない時代になりました。
16年前に国土交通省がマンション管理士制度を創設した狙いは、少なくとも「ビンゴ!」だと思います。
   

しかし。
それにもかかわらず。
   

マンション管理士が次々と独立している、、、という話を私はまったく聞きません。
私(42です)より若くて伸びている方の話を聞いたことがありません。
また、40代、50代でバリバリやっているマンション管理士や、60代以上で大きく事業を広げているマンション管理士もほとんどいません。

30代前半で独立した時は「若いほうだな」と思っていた私でしたが、今でも若い部類だとすると、マンション管理士という仕事の将来性そのものが疑われてしまいます。

この仕事をしていて「カウンセラー的な要素+価値観が様々なマンション組合員の合意形成能力」が求められるこの仕事は、それなりの人生経験(人間関係の苦労)があったほうが良いので、ある程度年齢が行っているのが有利、ともいえますが、一方で、最近の築浅マンションの区分所有者は20代後半~30代ですから、若い世代のほうが話が合いますしニーズ・ウォンツは世代が近いほうが汲み取れるはずです。
  
そこで、これまで出会ったマンション管理士(ほとんどが私より年上です)を見ていて、多くのマンション管理士に共通の『活躍できない理由』を自分なりに挙げてみます。

原因のすべては「足りないだらけのマンション管理士自身

1)絶対的な実務経験不足

※理事会の現場にマンション管理士として同席してみませんか?

ただ国家資格を持っていれば管理組合のアドバイザーになれるかと言うと、全くそうではありません。別の言い方をすると、単なる資格ホルダーや経験のほとんどない「ペーパーマンション管理士」が非常に多いのが、この資格の特徴と言えます。

同じ士業で例えば弁護士や公認会計士のような業務独占資格者であっても、合格したてのペーパー弁護士や会計士は最初にどこかの法律事務所や会計事務所で修行して、力(実務経験)をつけてから独立します。

ところがマンション管理士の場合、合格率は7%とかなりの難関ですが、上記のような士業ほどの試験レベルではない上に、受験者の多くが 、

  • 「自宅マンションで理事会役員を経験した」
  • 「マンション管理に興味がある」
  • 「住んでいるマンションで管理会社を叩きコストダウンに成功した」
  • 「資格を持っておけば飯が食えるかも」

という程度の認識で試験に臨んでいるように見えます。

受験者・合格者を年齢分布で見ると50~60代の多いのが特徴で、自宅マンションの理事経験を経て受験している人が多いのではないか?とさえ思えます。
  
残念ながら、これらの資格取得者では他の管理組合の戦力にはならないでしょう。

マンション管理と一口に言っても、組合運営の実務から建築・設備・法務・そして理事会役員間の(人間関係の)調整に至るまで、幅広い知識と多数のマンションでの豊富な経験、ケースバイケースで対応できる柔軟性、高度なコミュニケーション能力が必要となってきます。

自宅マンションの理事を経験した程度で即、他マンションの役に立とうというのでは難しいでしょう。
  
また、マンション管理会社の社員が試験範囲や試験日の重複する「管理業務主任者」の試験と一緒に受験するケースも多いです。

こちらは一応マンション管理業界の経験者だけに、実務経験を多く積んでいるものの、「管理組合の立場に立ってアドバイスする」という管理士の趣旨とは異なるために、現実的に資格を使って仕事をすることはありません。

また、マンション管理業界に長くいる人ほど、「業界の常識は世間の非常識」である「マンション管理業界の論理」が染み付いてしまい、かつサラリーマンとして決して高くはないけれど安定した収入が魅力的なため、マンション管理士として独立しようとする人はかなりの変わり者だといえます。(私も変わり者の一人です(笑))

2)独立・起業を「頭で」考えている(一歩が踏み出せない)

特に、企業勤めの長かった方や、マンション管理会社に長く在籍していた方に多いです。
せっかく人生経験を積み、マンション管理士になれる基礎があるのに、

  • どうやったら起業ができるの?
  • オフィスをどうしようか、お金はいくら必要か?
  • どうやって自分をアピールすれば良いのか?
  • 収入が入らずゼロになるのは困る
  • 万が一失敗したらどうしよう
  • 実務経験がないのだけれど、、、
  • 得意分野がないのだけれど、、、


と、あれこれ考えすぎて、一歩が踏み出せないのです。

・どうやったら起業ができるの?
→法人化する必要は全くないのですから、名刺を作って、ブログやFacebookを立ち上げて、いろんなセミナーに参加して人と交流を持ってみては?

・オフィスをどうしようか?軍資金は?
→自宅で良いのでは?、お客様と会う時は自分からマンションへ行けば良いですよね。必要な道具は携帯電話(スマホ)とパソコン、名刺程度がすぐできますよ。

・どうやって自分の存在をアピールすれば良いのか?
→ブログやFacebookは無料で作れますし、文章さえ書ければインターネットの力で人とつながる事ができますよ。

・収入が入らずゼロになるのが怖い
→今の仕事を続けながら副業や週末起業でも大丈夫ですよ。スモールスタートしては?

・万が一失敗したらどうしよう
→それを言ったら起業しないほうが良い、、、と言ったらおしまいですね。副業や週末起業でスタートしては?上記のようにほとんどお金がかかりませんよ。

・実務経験がないのだけど、、、
→当社のようなマンション管理士事務所で修行するか、お金を払って勉強しては?当社には随時3,4名のマンション管理士が修行に来ていますよ。(ついてこれない方には辞めてもらいますが)
→または、最初の1、2件のお客様にはタダ同然でサービス提供しては?
→マンション管理会社に就職して実務経験を積む手もありますよ。

・得意分野がないのだけれど、、、
→必要なのは「マンション管理士になりたい」「どんな形でも人の役に立ちたい」という強烈な想いと行動力だけです。専門分野はセミナーに参加したり、インターネットで調べて協力関係を作っておけば大丈夫ですよ。
 
 
これらの回答に書いてあることは、すべて私がマンション管理士を名乗った1年目から取り組んだことばかりです。

左脳で悩んでいないで、右脳で一歩動き出しましょう。
動き出すことで見えてくるものは、沢山あります。

3)カウンセラーになれないマンション管理士が多い

自分が区分所有するマンションで理事長を務め、マンション管理の重要性や面白さに目覚め、自信をつけているマンション管理士資格者に多いのが、自分の持っている知識や経験の範囲で

『こうあるべき』

と一方的に決めてかかってしまうことです。

自信家であることと、良かれの気持ちが強い性格の人に多いと言えます。

管理組合が抱える課題に対し、費用対効果やリスク・リターン、置かれている状況などによって2~3の提案を用意すべきであるにもかかわらず、自分の成功体験を前面に押し出し「これがベスト」と推進しようとします。

要は押し付けがましいのです。

私が今までに出会ったマンション管理士は、残念ながらこのような性質の方が多かったです。
当然、このようなタイプの方に相談したいと思う管理組合は少ないと思われます。
 
 
まずは、良き聞き役(カウンセラー)になって、理事長の悩みを徹底的に聴き取り、共感することから、マンション管理士の仕事は始まるのです。
「人の話を聞かない人」の言うアドバイスを、聴きたくないですよね。

4)売る商品がない(費用対効果の説明ができない)

マンション管理士を採用したい管理組合の側からすれば、実はこれが最大の壁ではないでしょうか?

理事会役員が信頼できそうなマンション管理士を見つけ、総会などで管理組合員に採用を諮ると、多くの場合、

  • 「採用してどれだけの効果があるのか?」
  • 「管理会社がいるのに、なぜ別の人間を採用するのか?」
  • 「無駄遣い(管理費の値上げ)はして欲しくない」

との声が上がってきて紛糾する可能性があります。

中には普段から理事会へ注文をつけるような人が、

「管理士などいらない、私が顧問になろうか?」

とでてくるかもしれません。

特に、将来的な修繕積立金の財政赤字が問題のマンションでは、「費用対効果が数字で表れにくいもの」に支出すべきではない、との意見に押されてしまう可能性が高いです。

理事会はマンション管理士の必要性について、区分所有者への明確なアカウンタビリティ(説明責任)があるため、強引にこぎつけない限り採用は否決されてしまいます。

(もっとも白紙委任状ばかりが集まる無関心所有者の多いマンションであれば別です。)

要するに「お金」です。

特に日本では、コンサルティングという「目に見えない」「将来的に費用対効果が産まれる」ようなサービスに対して、価値を理解されにくい傾向があります。

しかも弁護士や公認会計士のように認知されていない資格のため尚更です。

またマンション管理士の側にしても、管理組合がコンサルティングを受けるメリットを大勢の目の前で十分にアピールできないと言う、管理の知識経験とは別の「営業」的な部分での問題も大きいのではないでしょうか。

最終的に、頑張るマンション管理士の多くは、自己を採用するメリット(費用対効果)を明確に謳える

『成功報酬のみを前提とした管理費削減』という「管理会社イジメ」

に走ってしまいます。
これはとても残念なことです。

(マンション管理士が活躍できない理由(2)に続く)

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